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キンモクセイ endE 聞く

〔キンモクセイ〕


彼にはなんだか見られたくない。冷たい視線は向けられたくないし。

私はアンドルから逃げ出して部屋に戻った。


翌朝、キンモクセイが出掛けるという。

私も着い来ていいと彼が言っている。


〔楽しそう〕


「どこにいくの?」

「当地してるヴィテルあたりの探査」


なんで名前がヴィテルになったのか気になる。


〔聞く〕


「ねーヴィテルってなんでヴィテルなのヴィサナスとジュプスならヴィジュとかじゃないの?」

「……!」


変なことは言っていないのに、彼は少し顔を赤くして目をそらしている。


「どうしたの?」

「何でもないよ……偶然って怖いってだけ」


何がどうして怖いのか、彼はよくわからない。


「……抗争中で目的地に入れないから予定を変更するよ」

「どこいくの?」


たずねるとキンモクセイに紙の地図を渡された。


「ここは真ん中だからヴィサナスは左側かな?」


――はじめの予定はジュプス方面だったが、ヴィサナス方面へ行くという。


「金髪が多い国だね」

「ちなみに美男美女しか住めない国だってさ」


言われてみれば醜い顔の人は一人もいない。


「皆が若いけど年よりはウバステヤマに行くの?」

「さあね、この国の住民はアンチエイジングに全魔力を注いでるって話は聞くよ」


キンモクセイは管理はしていても民の風習に興味はないという。


「皆ニコニコしててべつに問題はなさそうだけど?」

「あんまり顔がいいと移住させられるって噂もあるよ」


でもそれは美人と認められる意味なわけで……


「二ヵ月前にこの国で一番の美女が失踪して数年になるって話があってね」

「数年前って今さらじゃない?」


キンモクセイに指示を出したのは上層部の誰かで、依頼の理由は不明らしい。


「歩いてる人に聞かないの?」

「調べようにもヴィサナスのタブーにひっかかるかもしれないからね」


ヴィサナスでタブーってなんだろう。


「たとえば醜いとか豚とか?」

「安直すぎるし、そういう単語じゃなくて偶像崇拝とかそっち系だよ」



「お出迎えもなく、申し訳ありません」


――私達が依頼主を探して歩き、ようやく現れたのは神官だった。

プラネターということは依頼を受けに来た事で言わずとも察してくれた。

寂れた神殿には入ってすぐに彫像女神の姿がある。


「さっそくですが、我々の現状を説明させて頂きます」

「はい」


ここは神殿とは名ばかりのバイオ機関で、美しい民を維持する為に遺伝子を選別、淘汰しているらしい。


「国一番の美女はハビスナと呼ばれるのですが、数年ほど前に失踪しました」

「そのハビスナが失踪すると何か困るんですか?」


神官(けんきゅういん)の女性は頷き、次の言葉を述べようとしている。


「……民は一年ごとにたった一人のハビスナから生まれているのです」


ハビスナは神殿から出ないで民を増やし続けるという。

女王蟻とか蜂みたいな感じがする。


「つまり、彼女が失踪して代わりのハビスナは二番手だから質が落ちたと?」

「はい、ましてや彼女は数千年に一人の逸材でした」


神官は惜しいと嘆いている。


「どうして失踪したの?」

「噂では駆け落ちとされていますが真偽の程は……」


ふと別の神官の女性が私を見て涙を流して去る。


「なんだろう?」

「神殿には滅多に来訪者はいらしませんので……どうかお気になさらず」


私達は一先ず捜索を始めることにした。


「……偶然でしょうが、貴女方は彼女に似ていますね」


去り際に神官の無機質な視線が刺さる。


「星一番の美女に似てるなんて上手くのせられちゃったよ~」

「はいはい。ただのおべっかだよ」


キンモクセイが浮かれる私を冷ややかに見ていた。



「あ、夜垣さん」

「よう、旅行の帰りか?」


彼はたまに遊びに来るのでいるのは珍しいことではない。


「あのね、今日はヴィサナスに行ったんだよ!」

「ヴィサナス……あの黄色い星だろ?」


黄色い星は多にもあるのにアバウトすぎやしないだろうか。


「なんか美男美女が沢山だったし」

「……たしかあの星は人拐いで有名だぜ?」


夜垣さん、地球から私と同じくらいの時期にやって来た割りには馴染んでるし詳しいな。


「へー、最近来たばっかなのによく星の治安を知ってるね」

「ま、安全確認はしないとな」


夜垣さんはキンモクセイにひらひらと手を降って去る。


「アイツ、いけすかない。ヨウヅキと同じ赤い髪だから余計に」

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってやつかな?」


キンモクセイはコクコクうなずいている。


「じゃあ報告してくるから、今日は解散」

「わかった」



「え?」


朝早くから突然呼び出されて私とキンモクセイは信じられない事をハレビレス艦長から告げられた。


「もしかしたら君達のどちらかは探している人物と関係があるのでは、と昨日ヴィサナスの神殿から連絡があったんだ」

「……」


私達はヨウヅキとマルトを連れてヴィサナス星へと降りた。


「お待ちしておりました」


神官は皆、女ばかりで玉座を取り囲む。


「あの方には劣りますが問題ないでしょう」


神官の重鎮のような人からジロジロ顔を品定めされる。


「こちらの方は洗練されていますね」


キンモクセイは顔は天使だから。


神官はヨウヅキとマルトを見て、薄く笑うとカチッと何かを押した。


「なに!?」

「……騙したな!」


二人は私達から引き離されている。


「お二方は暫くこちらへ」


私達は狭い部屋に閉じ込められてしまった。


「嫌な予感的中」

「どうしてこんなことに……」


普通に冷静なキンモクセイ、彼がいて私は一人じゃないから落ち着いていられる。


「……いらっしゃいますか?」


おどおどとした声がする。


「はい」

「入ってもよろしいですか?」


◆どうしよう?

→〔はい〕

〔拒否〕


入ってこないということは、あの怖い神官じゃないと判断できる。


「……」

「もしかしてあのとき泣いていた神官さんですか?」


私がたずねると目を輝かせた。


「私の名はカミラと言います」

「あどうも、ごていねいに……」


頭をペコリとされて外国人は握手のイメージだけど日本的な挨拶をされて珍しいと思う。


「これは誰にも言わないでいただきたいのですが……あの方を逃がしたのは私なんです」


小さな声でそう告げてカミラさんはすぐに部屋を出た。


「マリー、何をしているんです?」

「ヘマト神官長、逃げ出していないかの監視ですわ」


怖い神官はカミラさんをマリーと呼ぶ。マリーが名前でカミラが名字だったのかな。


「なるほど、急繕いの簡素な部屋でしたものね」


納得したようでヘマトは

カミラさんを下がらせた。


「チセイ様、キンモクセイ様、マリーは何か不躾なことを申しておりましたか?」

「なにも、いきなり連れてこられて怖いですか?とは聞かれたよ」


キンモクセイが答えるので私はうなずく。


「なんでそんなひどいこと聞くの?ヘマト神官長さんはマリーさんが嫌いなの?」

「い、いえ!そんな事はは御座いません!実は彼女が過去にお二方どちらかの父君を思慕しておりまして……」


マリー・カミラさんが私かキンモクセイの父を好きだったから、イビられてないか聞いてるのかな?


「じゃああのとき泣いてたのは……」

「きっとあの男の面影を感じたのでしょうね」


呟くヘマトの目に光が無いように感じる。


「どうかわたくしを信じてください。ハビスナの子よ――」


◆私はどうしよう。

〔信じる〕

→〔信じない〕


「なんか怖いから嫌だ」


私は差し出された手をとらない。


「ライラナ様はそんなことを仰らない!!」

「むぐっ!?」


ヘマトは私の口を左手で鬱ぎ、ナイフをチラチラさせる。


「そいつを放せよ!」


キンモクセイが私の落とした銃を拾ってヘマトへ向ける。


「んー!」

「どうぞ撃ってごらんなさい、神殿には死なない程度に刺して治療する技術があります」


首へナイフを向けて脅しをかけた。


「……やっぱり貴女はライラナ様によく似ていますのね」


ヘマトは私の顔を見て面影を感じている。口を塞ぐ手が下がった。


「くそ……」


キンモクセイは武器を向けるのをやめた。


◆今私にできる事は?

→〔抵抗する〕

〔従うフリ〕


「はなしてよ!」


ナイフを持つ手を叩いて、なんとか地面に落とした。


「動くな!」

「ライラナさまああああ!!」


ヘマトは逆上し、銃を向ける私に立ち向かってくる。


「こ、こないで!」


パーンという音がした。私の引き金を引く手は震えていて、指は動かなかったはず。


「人間に銀の弾丸は必要なかったな」


雰囲気の違うカミラ?が煙草をふかせて銃を構えている。


「あ…あの?」


私達が困惑していると事情を話してくれた。


「ヘマトは、人間でありながらまるで吸血鬼のように若い女の血を抜くのが趣味でな沢山の罪を犯したんだ」


彼女は吸血鬼を狩る人で、噂を聞き付けヘマトがターゲットだったと語る。


「あの、それじゃあハビスナの駆け落ちした夫に恋していたという話は?」

「奴が偶々いたアタシを利用して信じさせる為に作ったホラだろう」


じゃあなんであのとき泣いてたんだろう。


「じゃあ僕らのどちらかがハビスナの子ってのも作り話なんだ?」

「それは……」


カミラさんの視線の先には武骨なオープンカーがある。


「達者でなアグライラの子」


――とカミラさんが私とキンモクセイどちらに言ったのかはわからない。



【ハンターの名は吸血鬼という皮肉】

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