サブend:ペテチド 父親みたい
ヨウヅキって父親みたいだなあ。
「父親か……」
私の父はどんな人か、よく覚えてないなあ。
「あ、丁度よかった。一緒にカフェいかない?」
「うん」
マルトは母が辛党で父が甘党だったらしく、均等に両方食べたくなるらしい。
「カップル限定メニューなんだよ」
「へー」
そんな都市伝説みたいなのリアルで存在したんだ。
「いらっしゃいませ」
「じゃあカプチーノとカップル限定メニューで」
「私はソーセージとメロンソーダをアイス抜きでさくらんぼ付きの」
カフェのマスターは鼻の下にある小さな髭がダンディ感がある。
やはり彼のような大人は父親っぽい。
「どうかした?」
「あのマスターってザ、マスターだよね」
マルトは成る程と言って料理を食べた。
「それじゃ、今日はありがとう」
カップル限定メニューで半額になりラッキーだった。
「お嬢さん」
「はい?」
店を閉めた喫茶店のマスターが声をかけてくる。
「貴女にはまた会える予感がします」
このときには彼の言葉の意味がわからなかった。
■
密猟組織が出入りしているバーがあるという。
私達は手がかりなく探し出すことになった。
「四人でバーに潜入するぞ」
ヨウヅキは真顔でありえないことを言う。
「ヨウヅキはともかく、私達はどう見ても未成年……」
「我々は地球人より寿命が長いので見た目と年齢はイコールではないのです」
――つまり向こうに私達を未成年だと見た目で判断する事は不可能。
「ならいいのかな?」
「取りあえずオレは未成年じゃないし、任務だから仕方ないよね」
マルトがボソりと、とんでもない事を言い出した。
「今なんて」
「いきましょう」
詳しく追求しようとしたが、ヨウヅキに促されてうやむやになった。
■
「マスター、ノンアルコールのカクテルを三つと白ワイン一つ」
「かしこまりました」
バーのマスターはダンディな人、あれは間違いなく喫茶店のマスターだ。
「あれ、マスター喫茶店にもいなかった?」
私は直球できく。
「当店は昼に喫茶店、夜にバーというスタイルなのです」
――まるで昼は普通のサラリーマン、夜はスーパーヒーローみたいだなあ。
■
結局は何も怪しい点がなくて引き上げる。
「おやすみ~」
任務から数時間、皆が寝静まった夜に何だか眠れなくて部屋をでた。
「むぐっ!?」
「しっ……声を出すな」
気配もなく男は私の口をふさいでいた。
聞き覚えのある声で、もしかしたらと後ろを振り向く。
私は声を出せずに外へ歩かされてしまう。
「よし、声だしてもいいぞ」
「貴方は何者!?」
どうして私を連れ出したのだろう。
「俺は喫茶店マスターでバーもやっているが、それは仮の姿」
男はコートを脱ぎ、動きやすそうな格好になる。「実態は反プラネター組織連合ヴィーヴルの幹部、ペテチドなのさ」
ペテチドはつけ髭をぺりっと剥がして地へ捨てた。
「わっ若い……」
彼が初めの男らしい印象と違い綺麗な顔立ち。
「お嬢ちゃんはどっちの俺がいい?」
「しっ……知らない!」
私は首を降り、話を聞く気はないと意思をしめす。
「つれない事をおっしゃらないでくださいお嬢さん」
今さらマスター風な態度をとるが、今度は執事っぽい。
じりじりと壁に追い詰められ、これ以上後退できない。
「私に惚れてもいいんですよ?」
耳元で囁かれて頬が熱を持つのがわかる。
反プラネター組織なんて危ない人にそんなことを思ったら絶対いけない。
「顔赤いぜ、冗談なのに本気にしたか?」
嫌なのに認めたくないのに――
【愚者の企み】




