ヨウヅキ endQ 見送る
「ヨウヅキ、がんばってね」
私は祈る事しかできないが、神様に彼の無事を願った。
ヨウヅキが出て行き、程なくしてあの人が現れた。
「内河チセイ」
「ハレビレスさん」
私を名指しするなんて珍しい。
「外星的にプリンズのもの達を殺されては困る。ヨウヅキが表だってやらぬよう、牽制を頼む……それと」
「わかりました!!」
私はうなずく。ハレビレスはまだ話があるようだ。
「ヨウヅキが万が一、プリンズの上位幹部を殺しかけたら敵は拘束程度で止めるように指示してくれ」
「はい」
私は急いで彼をおいかけた。
自動操縦の機体に乗り、ヨウヅキを追跡する。
彼は今にもプリンズの偉い女を斬りそうなので、機体の窓から二人の間に威嚇射撃する。
私が撃ったとバレたらまずいので即座にステルスボタンを押す。
「誰だ!?」
ヨウヅキと女が辺りを見渡す。
「不意打ちとは卑怯な――」
潰そうと宣言しておいて敵を助けなければならないなんてジレンマだ。
「まあ誰の発砲だろうと、濡れ衣で捕まるわけにはいかない」
そう言うとプリンズの女は器機で部下に連絡をとる。
「プリンズの方々には早急に帰星してもらいますよ」
ヨウヅキは首輪を外して投げ捨てた。
◆なんだか様子がおかしい。
→〔止める〕
〔突き飛ばす〕
私はヨウヅキのもとへ走り、彼の右腕をつかんで動きを止める。
「う……」
「え、そんなに強くしたかな……大丈夫?」
ヨウヅキは手首を抑えて痛みを受けたように苦痛に顔を歪めた。
「……いえ、生まれつき呪いを受けていて貴女に素手で触れられると、寿命が減るんです」
知らなかったとはいえ、私が触ったせいで、彼を死に近づけてしまった。
「ところで、貴女はなぜここにいらしたんです?」
「ハレビレスさんがヨウヅキがプリンズのお偉いさんを殺さないように止めろって言ったの」
――一応は任務を達成できた。
「はあ……」
いつのまにかプリンズの人たちが周りにいた。
「どうしよう……あの、プリンズの偉い人!」
「なんだチセイ=ウチカワ」
なんで私の名前を知っているのか、は置いておく。
ヨウヅキが屋敷に招かれたとき私と一緒にいた事や、逃げ出した際に聴こえた悲鳴について話す。
「……なるほど、では写真の合成を専門家に確認させろ」
「はい」
とりあってくれないかと思ったら、部下に指示をだしてくれた。
「サアラ様、気になった事があります」
部下は手をあげて話の許可をとる。
「なんだエルナール」
「何故ランボルティニは監視カメラの映像をこちらに提供しなかったのでしょう?」
彼の問いに、サアラはハッとした。
「もしや、ランボルティニは我々を何らかの計画に利用したのではないか?」
「ヨウヅキ、いや陽尽。貴様はたしかテラネス星の華族だったな?」
エルナールがヨウヅキへ問う。
「ええ」
話した事で彼女の考えが改まってきた。
宇宙軍の幹部ヨウヅキのゴシップで得をする何者かはテラネス星の華族の彼が、ランボルティニ公爵の娘で婚約者の暗殺を仕立てた。
――という可能性も生まれたみたい。
「もしやマージンはテラネスへ侵攻する大義名分を作り、宇宙戦を始める気なのでは?」
エルナールの考えにサアラはうなずく。
「つまりマージンはプリンズを味方につけ、サルムの管理者であるヨウヅキを引きずりおろしたい人物だな」
でもマージンやマージルクスはヨウヅキの管理するサルムではなくマクスの一部、つまりはマルトの管轄だったはず。
「しかしサルムの管轄である彼を、なぜ管轄違いのマージンの令嬢なんでしょう?」
「たしかにサルムならばミューンかサニュの女を……いや、サニュの女は神官だから難しいが」
私も気になったので聞いてみる。
「プリンズ星とかシホウ星とかはどこの管轄なんですか?」
「プリンズはかつてはプルテノの管轄だったのですが、シホウやチイユ同様に無法地帯です」
エルナールが淡々と説明してくれた。
「あり得る話ではあるが、確証もないのに飛躍しすぎたな」
「では様子を見ましょう」
●●
『お前は今時めずらしく正直な娘だ』
ヨウヅキは軟禁され、私は一時的な看守となるのだが、周りに流した情報ではヨウヅキがプリンズから逃走中であると嘘の情報を流す。
「良い知らせと悪い知らせ、どちらを先に聞く?」
サアラが神妙な顔でやってきた。
「どっちから聞いたら良いんですか?」
テレビではこう言うとき良い方から聞くのを薦めていたけど、それまでの不幸を忘れるくらい最後に幸せがあったほうがいいと思う。
「でも今回は良いニュースのほうが順番が先だ」
「じゃあそっちをお願いします」
「犯人が捕まった。それだけだが、これで無罪放免だ」
案外あっさりと見つかるんだなあ。
「じゃあ悪いニュースは?」
「犯人はお前たちの仲間の一人だった」
サアラにその名を言われなくても、誰なのかわかってしまった。
――マージンに采配を下せる者といえば、彼しかいなかった。
なぜそれに気がつかなかったんだろう。
「やはり貴女は救世主です」
ヨウヅキがサニュへ寄り道しようといった。
これから組織内は減った仲間の補填で忙しくなるからだろう。
出所祝いというのも変だが、二人だけで宴へいく。
「ヨウヅキ様だ」
ヨウヅキを見たサニュの民はまるで神様のように彼を祈る。
「その方は?」
「今回の件はすべて彼女のおかげで解決した。彼女は私の救世主である」
彼は私の名前を言えないので、土に書いて周りに知らしめた。
「おお……」
「貴女こそ我等が女神様だ」
とんでもなく信仰をされている。
私達は盛大なパーティーを開かれてしまった。
「いつ帰れるの――!?」
【クエスチョン:サルム管理者の女神】




