ビジター
宇宙船の故障で予定外の星に不時着したとき、ぼくはマジ泣きした。
初星外旅行でいきなり遭難するか、普通? 自治会のバスツアーでバスに置いてきぼりにされるのと同じぐらいあり得ない。
しかも漂着先には緑色をした同型のペンシルタイプ宇宙船がたくさん地面に刺さっていた。遭難の名所ってやつですか。お仲間がたくさんいて心強いというかなんというか。ま、いくらお仲間がいたって外部と連絡がとれなかったら意味ないんだけどね。
ぼくはひとまず宇宙服を身につけ、エマージェンシーボタンを押して、救出を待つことにした。
翁は竹林の奥で一本の竹に目をやった。多くの竹の中でそれだけが不思議な光を放っている。
光は竹林の入り口にまで届くほど強く、翁は光に導かれるように奥へとやってきた。
近くに寄ってみると、光だけではなく幽かなささやきめいた音を感じる。声にならない声が助けを求めているような気がして、翁は心を騒がせた。
「おお、おお」
翁は竹に手をあてた。今、助けてしんぜましょう。
翁は腰に提げた鉈を両手にしっかり握ると、先ほど手をあてた節と節の間に勢いよく斬り込んだ。
その瞬間、声なき声は他の音を圧し、これまで以上の光が矢のように急激にあたりに広がった。翁は耳を両手で覆い、目を瞑って地面にひれ伏した。
しばらくして翁が目をあけると、竹の中では一人のそれはそれはうつくしい小さな姫御前が呆然としていらっしゃった。
「宇宙船……、は、破壊されちゃった、ね……」
目を潤ませる姫のあまりに愛らしいようすに、翁は竹の中に手を伸ばして姫をすくい上げ、胸に抱きかかえた。
「こんなところにかわいらしい娘御がおられるとはのう。連れ帰ったら女房もさぞかし喜ぶことじゃろう」
「……って! ぼくは姫じゃないから〜〜〜!!」
宇宙船の遭難で予定外の星に漂着した彼が、あの手この手で並みいる異星人たちの求婚から逃げ切った話は、現地では竹取の翁の物語として後世に伝えられることとなった。
本星に戻った彼はといえば、遭難体験を著して一攫千金。今度は象が乗っても壊れない頑丈な宇宙船を自腹を切って買ったそうだ。
二匹めのどじょうを狙う出版社からは、いまだに遭難エッセイを依頼されているとかいないとか。
「だが断る!」




