第十一話 intermezzo
大分遅くなりました。しかも今回は間奏ということでかなり短いです。最近はテストだのなんだので東奔西走するぐらい忙しかったのですが、そろそろ学校の方も春休みが近づいてきたので、春休みに入ればもう少し早く投稿できそうです。
薄暗い部屋。
日の光も月の明かりも差し込まないそこには、僅かに手元を照らす程度の明かり、それのみがあった。そしてその明かりは、ぼんやりと照らす。
この部屋にただ一人の存在を。
影から察するに、彼は椅子に座っているようだった。
椅子に深く腰をかけ、顎に手をやったまま、
「なるほど・・・動いきましたか。───凡そ予想通りの展開ですね」
静かに一人呟く。
それは発したものにしか聞こえないものではあったが、妙に部屋に響くのが感じられた。
・・・だが、それにしても───
と、彼は手元に視線を移し、
「ここまで完璧に予想通りとは素晴らしいものです。流石、としか言いようがありませんね」
リーダーのことを思う。
ここまでの作戦は全て彼の、いや彼等のリーダーがたてたのである。
そしてそれは今現在大きな修正は必要ないほどに上手くいっている。
しかし。
寧ろそれが不安要素でもあるのが頭の痛いところだ。
彼等が相手にしているのは〈神殺し〉。
ありとあらゆる常識が通用しない存在だ。それに対し、策が万事上手くいくなど有り得ないといっても過言ではない。万事上手くいかない方が十分に考えられた。
それなのに───
何の支障もない。
これこそが支障であると、彼は声を大にして言いたいことである。
彼の考えとしては、どこかしらに必ず修正が必要な出来事が発生するであろうと睨んでいた。故に提示された作戦にもあらゆるパターンに備えた修正案を考えてあったし、それさえも打ち破るであろう〈神殺し〉に対して最善とはいえないものの辛うじて次善とは呼べるであろうものも考えていた。
確かに、それらが使われていないことは素直に喜ぶべきことだし、歓迎していないわけではなかったが。
今彼の胸中には不安しか存在し得なかった。
これまで上手くいっていたからこの先も上手くいくだろうなんて楽観論は生憎ながら彼等の誰一人として持ち合わせてはいなかったのだが、彼以外の仲間たちはリーダーを信じ切っていた。つまり、大体作戦通りいくだろうと。
無論、彼とてそれが悪いことだとは思っていない。信じるあまり思考停止するのは愚かなことではあるが、手足としての彼等に長を信じるな、とは言えない。いや、それは正しいことである。
誰とてそうであろう。
自身の手足が勝手に思考し、勝手気ままに動けば問題がある、どころか問題しかない。
結局のところ、いかに作戦に無理があろうがなんだろうが、彼等は命令通り動かなくてはならないのだから信じる以外にないのである。
とまあ、関係ないことを延々と垂れ流していても仕方がない。結論を急ごう。
問題は彼が何故不安を抱いているか、という一点に尽きる。
不安の源。それは、作戦があまりにも上手くいきすぎていることである。常識はずれの存在を相手取っているのに凡そ予想通り。
だからこその『これから』が心配なのだ。
正直言わせてもらえば前半などどうでもいい。多少失敗したところで後からいくらでもリカバリーが効く。しかし、後半の方へ行けばいくほど取り返しがつかなくなることが多くなってくる。そこでまさかのどんでん返しが起こってしまうことを恐れているのだ。
今まで上手くいきすぎた反動とでも言おうか。
堤防が決壊してしまうような、そんな予感がしてならない。
だが、ここで躊躇するわけにはいかない。既に作戦は次の段階へと為ったのだ。
気を取り直し、
彼は次のステップへと足を掛けたのであった。