第一話 企み、あるいは陰謀
「やっと来たか・・・」
「遅れて申し訳ありません」
「まあ、このぐらいなら一向に構わん」
「然り。まだ全員が揃っておらんからな」
少女は、少女が所属する組織のトップともいえる、長老会への出席を命じられていた。
恥ずかしいことだが、彼女は若干の遅刻をしている。幸いなことにまだ揃ってはいなかったようだが。
「遅れてすまない」
そんな言葉と共に最後の一人がやってくる。
「では、始めようか」
「すみません。一体何を・・・?」
「今から説明する。ほれ、お主の側に写真が置いてあるじゃろう」
そう言われれば、確かに写真が置いてある。
そこには男・・・少年と青年の中間ぐらいの、制服を着た男が写っている。
「どうだ?その男を見てどう思う?」
そう言われて、少女は写真に写った男を見つめる。
「そうですね・・・若干締まりのない、いまひとつな顔ですね。体つきはそんなに悪くはないようですが」
「案外辛口ですね・・・」
出席者の一人がそう零す。
「これからお前に一つの任務を授ける。必ず成功させなくてはならない任務だ。やってくれるか?」
「はい。必ず成功させて見せます。で、その任務とは?」
「その写真の男がいるじゃろう。そいつに嫁げ」
「はい・・・は?どういうことですか?」
「どうもこうもあるか。そいつの妻、あるいは愛人になれと言っている」
「それは・・・何故?」
───説明不足だったようだな。
───そうですね。
───だから、しっかりと説明しろとあれほど・・・。
───だが、断られる可能性が。
俄かに騒ぎ出す会議。
それを鎮めたのは長老会でも一番の発言力を持った老女であった。
「静まりなさい。私から説明しましょう。あなたは〈神殺し〉とはどんな存在か知っていますか?」
「基本的なことは一通り。カミを滅ぼし、その力を簒奪した者のことでしょう?」
「そうです。そして、この写真に写っている男は〈神殺し〉です」
「えっ!?」
少女はもう一度写真を見てみる。しかし、お世辞にもとてもそうは見えない。正直、どこにでもいるような男にしか見えないのだ
「それで結局どういうことなんですか?」
「要点を纏めると、あなたはその男に送る人質です。そして、人質を送る代わりにこちらは彼からの庇護を得る。つまりはそういうことです。異論はありませんね」
「・・・はい」
「任務を受けるなら、1つ注意点があります。できる限り対象の側にいなさい。それと、何かあった時のための武装は後で送ります。それでは、よろしく頼みますよ」
「わかりました」
ともかく、写真を眺めていた玲奈は任務を受けることを決意する。
それをみて、彼等はニヤリと笑みを浮かべる。
しかし、少女はそんなことを知る由もなかった。
そして、彼のいる街へ出発するのであった。