第七話 理由
今期アニメとして境ホラ見てるんですが、確かに面白いです。原作読んでたら特に!ただ、あの膨大な設定はアニメ見てるだけじゃどう考えても伝わらないし・・・終わクロをアニメ化した方が多分良かったんじゃないかと愚考する次第であります。終わクロにも自動人形とか武神出ますし。それに、アニメを見るからと原作読み直ししたせいで、カワカミンを大量摂取したようで、なんかおかしくなってしまいました。え? 元からおかしいって? いやだな、ははは。
あと、これから忙しくなるので、次の更新は2週間ほど後になるかと。
少女は、香取 燿と名乗った。
「どうしてまた、なんか訳のわからん覆面に追いかけられていたんだ?」
智昭は何度目になるかわからない質問を少女に投げかける。
いくらなんでも流石にもう逃げられないとわかっている少女は、半ば自棄になりながらも答える。
燿ははあ、とため息を吐きながら
「一応理由は分かっているのよ。そしてその目的もね」
と、ダルそうに二人に告げる。
あのね、と燿は前置きしてから、
「覆面達の目的はカミそのものよ」
と爆弾発言をした。
智昭も玲奈も一瞬言われた意味が分からなかった。だが、一瞬以上過ぎても意味が分からなかったので、結局は思考が追いつかなかったわけではなくて、本当に意味が分からなかったのだろう。
「意味が良く分からないのですが・・・」
玲奈はどういうことなのか、燿に問う。
「意味が良く分からない・・・ね。意味が分からないも何も言葉の通りでしかないのだけれど。彼等の狙いはカミそのものを手に入れることよ」
こんなこともわからないの? という表情の燿を見て玲奈は内心イラっとした。
が、それを押し殺し、顔だけは普段通りを保つ。大丈夫、大丈夫このぐらい何ともないです、とか思いながら堪えていた。
「つまり、彼等はカミを手に入れるために行動していたと・・・。それが何故貴女を追いかけることに繋がるのですか?」
誰もが思うであろう疑問を玲奈は燿にぶつける。
「それは私の家が神社で、そこにカミが祀られているからよ」
「なるほど。貴女の家で祀られているカミを手に入れるという訳ですね」
「ええ。それで──
「なあ、意味が全然分からんのだけど」
いざ燿が答えようとした、その時智昭が突然発言した。
燿は自分の言葉が途中で遮られたことに対して、智昭をキッと睨むことで不快感を表した。
玲奈は相変わらず魔術関係の知識は足りないですし、同時にデリカシーもマナーも足りてないですねぇ、と嘆息した。
端から智昭の知識の足りなさゆえ見捨てていたが、それがここに来て仇になりましたか、と諦めに似た境地に玲奈は辿り着いたのであった。
玲奈は、すみません、と燿に断ってから、
「それで、どこがわからないんですか?」
智昭はうーんと少し考える素振りを見せてから
「ほとんど全部だな」
と答えた。
それを聞いた玲奈は思わず頭を抱えたくなった。初めからですか・・・と。
気を取り直し、初めからキチンと説明していくことにした玲奈。
「まず、覆面がカミを狙っているというのはわかりますよね?」
「おいおい、あんまり馬鹿にするなよ。いくら俺でもそのぐらいは分かるっての」
智昭は大袈裟な身振りをしながらそう答える。
では、と玲奈は続けて、
「カミは滅びていない限り、基本的にどうなっているかわかりますか?」
「それも聞いたことがあるな。確か・・・封じられているか、どっかに隠れているかだったっけ」
ええ、と玲奈は首肯してから、
「その通りです。正解です。褒めて差し上げましょう。パチパチ」
とまるで心の籠っていない賛辞を智昭に送った。
それに対して智昭は憮然とした表情をしたが、特に言葉を発することはなかった。いちいちそんなことに突っかかっていては話が進まないからだ。
智昭は、で? と話の続きを促す。
玲奈は、ここで一つ質問です、と言って一息ついてから、
「封じられたカミは一体どうなったと思います?」
智昭に問いかけた。
問いかけられた智昭はきっかり三秒考えてから答えた。
「わからん」
と。
玲奈は智昭が答えられるとは思っていなかったが、それでももう少し考えても良さそうなんですが・・・という感想を抱く。
それでは封じられたカミのその後について説明します、と玲奈は始めた。
「昔は現代よりも遥かにカミの数は多かったそうです。それが良かったのか悪かったのかは、当時の人しかわかりませんが、そんなことは私達には関係がありません。関係はないのですが、これから説明することには大いに関係があるので、忘れないでください。いいですか、なぜ世の中にはこれほど多くの神話、そして神に関する話があるのでしょうか。考えたことはありますか?」
智昭は暫し考えている仕草──顎に手をやる動きだ──を取るも、答え自体はすぐに出ていた。わからない、と。だから、今取っているのは考えているポーズだ・・・とか余計なことを考えていた。
どうせ結論は出ているので、あまり待たせるのも悪いと思い、智昭は正直に答える。
わからん、と。
玲奈ははあ、とため息を吐き、わかっていたことですが・・・と続ける。
「神話などに登場する神は大抵実在します。なぜなら、神話より先に存在したカミを参考にして、当時の人々は神話を作ったからです」
ここまではOKですか? と玲奈は確認する。
ああ、と智昭は頷き、
「それはわかるな。身近にそんなのがいたらそれを題材にした話を作るのも当然だな。うん」
「当時の人々はそのカミ達に名前を付け、中でも危険なカミは滅ぼすか、封じていました」
ですが───
「人々はカミの力を恐れてはいましたが、同時に憧れてもいたのです。昔の人の方が純粋な力に対する欲求も強いですしね。故に、封じたカミを祀ることでその力に肖ろうと、そう考えたわけです」
つまり───
「例えば何らかのカミが祀られている神社などは、基本的にその祀られているカミが、そこの御神体として封じられているという訳です」
理解できました? と玲奈。
「まあな。ちょっと情報量が多くて頭が痛いが・・・」
そう言いつつ、頭に手をやる智昭。
「で、あんたは本当に分かったの?」
どうやら一段落ついたようだと判断し、一人蚊帳の外であった燿は智昭に尋ねる。
智昭は、ああ、勿論だとも、と首肯する。
「──そう、それは良かった。それじゃ、仕方ないから覆面の目的を話すとしますか」
燿はやっとのことで、訊かれたことに対する答えを発する。
「あの覆面共は、ウチの神社、香取神宮に祀られているカミを復活させるつもりなのよ。それで何を企んでいるのかはさっぱりなんだけど、取り敢えず復活させることが目的らしいわ。悪いけど、それ以上はわからない」
「カミを復活ですか・・・」
玲奈はかなり深刻な事態ですね、と考え込む。
封じられているカミを復活させるのは、余程強固な封印でもない限り、そう難しいことではない。封印とは本来中のものを外に出さないようにするためのものであって、外から中のものを取り出すことを防ぐ役割はあまり持っていないのだ。勿論、例外はある。外から中のものを出せないようにする封印も存在しているからだ。
だが、カミを封じるような封印だ。この場合はおそらく、中のものを外に出さない効果の方が強いだろう。とすれば、しっかりした組織と事前の準備で問題なく封印は解けるに違いない。
ここで、疑問が一つ浮上してくる。
何故彼等覆面達は神社のおそらくは神主である娘を追いかけていたのだろうか。
玲奈は問う。何故なのか、と。
「それは、彼等がどこにカミを封印しているのか知らなかったからよ」
確かに。
言われてみればその通りだ。
玲奈は納得する。
「そんなことはどうでもいいんだよ。問題はそのカミが復活するかどうかとさ、あとはその封じられているカミがどんなのなのか、だけだろ?」
いつまでも考え込んでいる空気に耐えられなかったのか、智昭はそうシンプルにまとめた。
その言葉に玲奈は、どうやら考え込みすぎていたようです、と反省し、自分に質問するように言葉を作った。
確か───
「香取神宮と言えば、祭神は経津主神でしたよね? 別名、斎主神、伊波比主神とも云われる。神話としては、『日本書紀』の神産みの第六の一書では、伊弉諾尊が軻遇突智を斬ったとき、十束剣から滴る血が固まって天の安河のほとりの岩群となり、これが経津主神の祖であるとしているはずです。更に、第七の一書では、軻遇突智の血が天の安河のほとりの岩群を染めたことにより岩裂神・根裂神が生まれ、その御子の磐筒男神・磐筒女神が生んだのが経津主神であるとされています。尤も、これはあくまでも神話であり、実際のカミとはそこまで深い関係はありません。精々、神格の『フツ』というのが刀剣で物がプッツリと断ち切られる様を表すもので、刀剣の威力を神格化した神であるとの解釈がありますので、何かを切るのが上手いのではないでしょうか」
なるほどな、と智昭は頷き、
「それは一理あるな。刃物に注意すればいいのかな?」
すると、燿がそれに駄目だしをする。
「違う違う。あのね経津主神ってのはとある神器を持っているらしいのね。どうやら布都御魂の元になった剣らしいわ」
ふーん、と玲奈は感心し、
「なるほど・・・。ですが、何故貴女はそんなに詳しいのですか?」
と、警戒を露わにした質問をした。
「そんなの家にある文献に載ってるに決まってるじゃない。仮にも家の神社の主祭神よ」
と、燿は玲奈の質問にこう返した。
それもそうか、と玲奈は納得し矛を収める。
それでさ、と燿は
「私の扱いはこれからどうなるわけ?」
時計を見ながら二人に問う。
ふと、二人が時計を見ると、既に長針が十一を回っていた。
どうやら、思いのほか話し込んでいたようだ。
んー、そうですね、と玲奈は
「それじゃあ、今日は私の部屋に泊まっていってください。こんな時間に帰ると危ないですし、あの覆面が何処かに隠れていて狙っていないとも限らないわけですし」
そう提案した。
「まあ、それでいいんじゃねえの? 追いかけられた今日にすぐ油断して一人で歩いてたらまた狙われるだろ。次は俺達みたいな助けが来るとも限らないわけだし」
智昭もその提案には同意する。
「そうね。どうせ、私じゃあんたらから逃げることは出来ないし、仮にあの覆面とあんたらが繋がっていても私にはどうしようもないわけだしね」
燿もそう言って拒絶はしない。
「じゃ、まあそういうことで決まりかな? もうこんな時間だし、いつまでも女性の部屋に滞在してるのも悪いし、俺は帰るわ」
そう言って智昭は自分の部屋へと戻って行った。
約二十分後、玲奈の部屋からは明かりが消えたのであった。
今回無駄に神話について語りましたが、あまり本編には関係はないです。読み飛ばしても構わないかと。