第四話 昼食時の一時
今回はかなり短いです。
遅いくせに短いとはなんだ、けしからん。とお怒りの皆さんがいるかと思います。が、こちらも言わせてもらうなら、最近妙に忙しいのです。そんな訳でほとんどパソコンに触れてさえいなかったのです。
というわけで第四話です。良い訳ばかりですみません、ホント。
兎にも角にも楽しんでいってください。暫くは本当に不定期更新になるので。
えらく短く感じた午前の授業。気が付けば、昼休みである。
智昭達はいつもの如く、四人で机を合わせ昼食を食べるべく準備を始める。
「なあ、例のアレどうすんの?」
弁当の包みを広げながらそう問いかけるは和宏。彼もまた自分の立ち位置について考えているようだ。
「そうだな・・・多分去年と同じような感じになるんじゃないか?」
そう、智昭が答えると、
「そーだねー。そうなるんじゃないかなー?」
有希も同じ考えだったようで、同じような答えとなった。
「やっぱそうなるかー。まあでもそんくらいしかできないしなー。仕方ないっちゃあ仕方ないか」
和宏はそういった後、弁当を食べ始める。
「そりゃあそうだろ。俺達に他のクラスを貶められるような陰謀が立てられるとも思えないしな。それが立てられるのも立てられるで問題はありそうだけどな」
いつものようにコンビニで買ってきた昼食を食べるべく鞄からパンを取り出す。
「あのー、去年と同様っていったい何をしたんですか?」
今まで、会話に参加できなかった玲奈はここぞとばかりに参加する。強引に。もしかしたら寂しかったのかもしれない。
「うん。競技に参加しただけだよー」
一足先に弁当を食べ始めていた有希は、口の中の物をのみこんでから後にそう答える。食事中に話すときにはちゃんと食べたものをのみこんでから話しましょう。物を咀嚼しながら口を開くと不愉快な気持ちになる人がいますので。大概はそうだろうが。
「選手になったという訳ですね。それで、結果はどうだったのですか?」
「まあ、それなりかな。負けた回数よりも勝った回数の方が多かったはずだよ。結局一位にはなれなかったけどね」
「・・・それは意外です」
そんなことを言いながら、玲奈の視線はある人物に注がれていた。
「俺かよっ!」
そのある人物とやらは叫んだ。己の全存在をかけて。なんてそんなことはないのだが、矢張りそれなりには不本意だったようで、納得がいかないらしい。
「そうです。勿論あなたのことです。いつもの動きとかを見ていたら・・・でしょう?」
「え、え? そ、そうかな?」
いきなり玲奈に振られた有希は慌てながらも肯定はしなかった。否定もしなかったが。そこになんらかの意味を感じたとしてもきっとそれは違うのであろう。きっと。だからそこを深く考えてはいけないのだ。
「俺だってやりゃ出来るんだよ」
と、ここで智昭の反論が来た。
だが、玲奈はそれを冷めた目で見て、
「あーあー、いますよねそういう人って。『俺はやれば出来る』だの『本気をだしてないだけだ』とかいう人。でもそういう人に限って、大したことないんですよね。そんなこと言う人は大体自分の実力が見えてない可哀想な人達ですから」
と、真っ向から智昭を粉砕した。
当の智昭は固まって動かない。石化されたらしい。誰か解除を。
「なんて、惨い・・・」
あまりの玲奈の物言いに和宏は心胆を寒からしめた。
ここで補足だが、智昭は決して運動神経は悪くない。しかし、彼は〈神殺し〉とかいう意味不明な力により身体能力が大幅に上昇した。それはもう凄まじいほどに。例えれば、プレーリードッグからカバぐらいには強くなった。カバ強いよカバ。何故カバ? と思う人もいるかも知れないが、カバは実際かなり強い。基本的に生き物は大きければ大きいほど強い。大きいことは強いことだ、ということで、カバは体長4m、体重2~3tある。更に口がでかく、草ばっか食べてると思いきや、見た目に反して気性が結構荒く、他の動物を襲ったりすることもあるのだ。また、カバを逆さまから読むとバカだから、智昭は馬鹿なのと掛けていると推察出来なくもないが、それは全くの邪推であり、事実とは全く関係がないので悪しからず。
と、話が大分ずれたが結局何が言いたいのか、というと、智昭は普段力をセーブしているのだ。だから、日頃の運動ではイマイチな動きしかしていないのだが、本来は結構動ける。
勿論、玲奈もそれを知ってはいるのだが、日頃のセーブした動きを見ている限り、競技に参加してそれなりに勝ち進んでいるという事実がなかなか信じられなかったりするのだ。
智昭が石化し、場が一旦静かになったところで、3人は黙々と食事を再開する。
和宏も有希も玲奈も弁当である。
周りも弁当か、そうでなければ購買で買ったパンやら弁当やらおにぎりである。
そして、教室内の人数はあまり減ってはいない。
これが何を意味するのか・・・。
『例の行事』の準備が始まったため、不用意に自クラスの情報を漏らさないため。なんて理由がすぐにあげられるし、当然それも理由の一つではあるのだが、主な理由は別にあったりする。
「そう言えば、どうしてここの学校にはないのでしょうか?」
暫く静かに食事をしていた玲奈がポツリと零す。
「え? 何が?」
流石に長年連れ添った夫婦でもないので、玲奈が何を言いたかったのか良く分からない有希。
「食堂です」
「え? あ、あー。なるほどね」
うんうんとしきりに頷く有希。
「この学校では昼食は持参か、購買で買ってくるしかありません。しかし、他の学校では食堂、あるいはお洒落な感じでカフェテリアなんてものがあったりします。何故ここにはないのでしょうか?」
「さあな。そんなもん知るか」
いつの間にか復活していた智昭はけっ、という感じで吐き捨てる。
どうやら先程の玲奈の発言により、深く傷ついたためやさぐれているようだ。
「別に蓮華君には聞いていませんが」
冷ややかな目で玲奈は智昭を見つめる。
やがてそれに耐えきれなくなった智昭はついと目を逸らす。弱いな、コイツ。
「そういえば、俺それについて聞いたことあるぜ」
弁当に入っていた目玉焼きを口に入れ、咀嚼してから飲みこんだ和宏はそう言う。
「本当ですか?」
「ああ。なんでも、設計ミスらしいぜ。もともと作るつもりだったのが、うまく伝わってなかったらしくて、なしのまま建てちまったからだとか。信憑性については何とも言えないが、それなりにありそうな理由ではあるだろ?」
和宏はニヤっとしながら弁当の最後の一口を口に放り込む。
「面白いですね。確かにありそうではあります。実際のところは分かりませんが、こういう話は自分たちで答えを想像するからこそ面白いのかもしれませんね」