表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第一章:外れスキルと辺境の村

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/23

第七話:父の疑問

 朝日が村を照らしても、昨夜の空気はまだ消えていなかった。

 壊れた柵、掘り返された土、疲れた顔の大人たち。世界は明るいのに、みんなまだ夜の延長線上にいるみたいだった。

 俺は家の裏で井戸水を顔にかけていた。

 冷たい。


「起きてたか」

 父だった。

 服は着替えているが、首に擦り傷がある程度。あれだけ戦ってそれだけか。本当に何なんだこの人。

「そっちこそ」

「歳を取ると寝不足でも起きる」

「十五歳の息子に言う台詞じゃない」

 父は井戸の縁に腰を下ろし、少し黙ってから聞いた。


「お前、どうして敵の位置がわかる?」


 来た。

 まあ来るよな。

 俺は少し考え、答えられる範囲で答える。

「見える」

「何が」

「人の位置とか、地形とか、建物の中とか」

「どこまでだ」

「半径1kmくらい」

 父は静かに息を吐いた。

「倒れた後からか」

「たぶん」

「前兆は?」

「ない、と思う」

 父はしばらく俺を見ていたが、やがて言った。

「無理に全部話せとは言わん」

「いいの?」

「お前は昨夜、村を救った」

 それだけで十分だとでも言うような声だった。

 押しつけがない。

 その優しさが、ちょっとくる。

「ただし気をつけろ」

 父は続ける。

「その力が外に知れたら、利用したがる奴はいくらでも出る」

「うん」

「奪えないものほど、人は欲しがる」

 妙に実感のある声だった。

 この人もきっと、そういう世界を見てきたんだろう。

「父さんは何者?」

 聞き返す。

 昨夜の強さを見た後で、普通の農民だとはもう思えない。

 父は鼻で笑った。

「農民だ」

「無理がある」

「昔ちょっと冒険してた」

「その“ちょっと”の範囲が広すぎる」

「人には色々ある」

 便利な逃げ方しやがる。

 でもまあ、俺も秘密を抱えている。お互い様だ。

 父は立ち上がり、俺の頭をぐしゃっと撫でた。

「少なくとも、俺はお前を信じる」

「……重いこと軽く言うな」

「嫌か?」

「嫌じゃないけど」

「ならいい」

 言うだけ言って去っていく。ずるいな、この父親。


 朝の村では、昨日の話でもちきりだった。

「レインが“左から来る”って言ったら本当に来たんだ!」

「まるで見えてるみたいだったぞ!」

 やめろ。全部事実だけど大声で言うな。

 とはいえ、完全に隠し通すのはもう無理だろう。少なくとも村の中では“レインは妙に敵の動きがわかる”で定着してしまった。

 そこへミリアがやって来た。

「人気者」

「嫌な言い方するな」

「でも事実でしょ」

 彼女は少しだけ真面目な顔になる。

「昨日、ありがとう」

「何が」

「倉庫の裏」

 ああ、あの侵入者か。

 俺が父へ指示を飛ばさなければ、倉庫は危なかった。

「別に。見えたから言っただけ」

「それが普通じゃないって言ってるの」

 やっぱり気づいてる。

 でもミリアはそれ以上踏み込まなかった。

「まあいい。あんたは昔から変なとこで頼りになるし」

「昔から、はちょっと盛ってる」

「昔はもうちょっと頼りなかった」

「正直だな」

 昼過ぎ、父が薪を割りながらぽつりと言った。

「賢いのはいいが、性格はほどほどに悪くしとけ」

「何だその教育方針」

「行き過ぎると嫌われる」

「父さんに言われたくない」

「俺は好かれてる」

「母さんにはね」

 父の手が一瞬止まった。

 よし、一本取った。

 村は守られた。

 だが、これで終わりじゃない。

 俺の物語はまだ始まったばかりだ。

読んでいただき、ありがとうございます!

もし良ければブクマや評価をつけていただけると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ