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半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第一章:外れスキルと辺境の村

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第六話:盗賊壊滅

 西の森道の奥から現れた男は、見るからに格が違った。

 毛皮の上着、大剣、落ち着いた歩き方。部下が混乱している中、一人だけ呼吸が乱れていない。

 頭領だ。

「……面倒な村だな」

 低い声が響く。

 馬鹿じゃない。状況を理解している。

「父さん、左右に弓二人。頭領の後ろに剣二人」

「了解」

 弓が同時に射られる。

「左先!」

 父は俺の声より早く動き、一本をかわし一本を弾いた。そのまま距離を詰める。

 だが頭領も遅くない。大剣が横薙ぎに唸る。

 風圧で草が薙がれた。

「こわ」

 素で漏れた。

 普通の相手なら、あれで終わる。

 でも今は違う。

 俺が見えている。

「右後ろ剣持ち!」

 父が半歩下がり、横から来た男の膝を払う。倒れたところを肘で沈める。

「次、頭領は左肩狙い!」

 父が踏み込み、大剣の懐へ潜る。柄尻が肋骨に刺さり、頭領が息を詰まらせる。

 そこへ弓兵が援護を入れようとする。

「上!」

 父は頭領の身体を盾にした。矢が頭領の肩に刺さる。

「ぐあっ!?」

「味方撃ちかよ」

 盗賊団の空気がさらに死んだ。

 頭領は怒りで視野が狭くなっている。負け筋だ。


 その時、不意に頭領が俺を見た。

「ガキ。てめえか、さっきから吠えてんのは」

 ぞくりと背筋が冷える。

 読まれた。

 でも、目線が逸れた。

「よそ見したな」

 父の拳が頭領の顎を跳ね上げた。続けざまに回し蹴り。巨体が膝をつく。

 父は鎌の刃を首元へ当てた。

「終わりだ」

 残党が一斉に逃げ出す。

「追うな!」

 俺が叫ぶ。

 村人たちが足を止めた。

 正解だ。森へ追えばこっちが危ない。守れた時点で勝ちである。

 戦いが終わると、一気に膝が笑った。

 力が抜ける。


「……終わった?」

 自分でも情けない声だと思う。

 父は縄で頭領を縛りながら頷いた。

「終わりだ」

 その瞬間、村のあちこちから泣き声と歓声が混じった。

 子供を抱きしめる母親、へたり込む男たち、泣き笑いする老人。

 盗賊三十人相手に、村はほぼ無傷。

 奇跡みたいな結果だ。

 いや、奇跡じゃない。

 地形と情報と、父の暴力の結果だ。

 ゲイルが肩で息をしながら近づいてくる。

「レイン坊……お前、本当に見えてたのか?」

「だいたい」

「だいたいでこれかよ」

「父さんが異常に強かっただけ」

「それだけじゃない」

 父が真面目な顔で言った。

「敵の動きが先にわかる。それだけで圧倒的だ」

 その言葉が胸に刺さる。

 前世では、こういう裏方の価値は流されがちだった。

 でも父はちゃんと口にしてくれた。

 お前のおかげだと。

 ミリアも倉庫から出てきた。子供たちを落ち着かせ続けていたせいか、髪が乱れている。

「……終わったの」

「たぶん」

「その“たぶん”嫌い」

 そう言いながら、彼女は明らかにほっとした顔をしていた。

 そして小さく呟く。

「ほんと、なんか変わったわね」

 俺は聞こえないふりをした。


 父が頭領を蹴って転がしながら言う。

「レイン」

「何」

「お前のそれ、やっぱり異常だぞ」

「知ってる」

「だろうな」

 父は笑った。

 俺も少しだけ笑い返す。

 異世界転生して、初手で村長の不倫と盗賊の位置が見える能力。

 字面はひどいが、悪くない。

 少なくとも今夜だけは、そう思えた。

読んでいただき、ありがとうございます!

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