表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第一章:外れスキルと辺境の村

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/23

第四話:軍師レイン

 夕暮れの村は、普段よりずっと静かだった。

 炊事の音さえ小さい。子供たちは倉庫へ移され、老人もまとめられている。

 見張りは配置につき、男たちは倒木や石を運んでいる。

 俺は中央の広場で、最終確認をしていた。


「西は絶対に深追いしない。押して引く。足止め優先」

「わかった」

「南は踏み抜かせたらすぐ離れる。戦うな」

「了解」

「北が一番危ないから、父さんは最初そこ」

 父が腕を組む。

「本命は西なんだろ」

「だからこそ、みんな西を見る。北は“裏を取った”と思って油断する」

 父の口元が上がる。

「性格が悪い」

「褒め言葉として」

「受け取るな」

 受け取ります。

 ミリアは縄を抱えて走り回っていた。

「倉庫の水、あと二つ!」

「そこに置いといて!」

 ただ避難しているだけじゃない。年下の子を安心させ、必要な物を運び、母の手伝いもしている。こういう時に動ける人間は強い。


 準備の合間、ミリアが俺の横へ来た。

「はい」

「何これ」

「薬草茶。リディアさんが落ち着くからって」

 リディアさんとは、母さんのことだ。

「ありがたい」

 受け取ると、彼女はじっと俺を見る。

「……ほんとに大丈夫?」

「ああ」

「即答した」

「でもやるしかない」

 ミリアは少し黙ってから、ふっと笑った。

「なら、せめて死なないで」

「物騒だな」

「盗賊来る夜に何言ってんの」

 確かに。



 日が落ちて、村は闇に包まれた。

 中央の物陰に陣取り、俺はエリアサーチを広げる。

 半径1kmの盤面。

 西の入口、南の畑道、北の獣道、倉庫、井戸、家畜小屋、全部見える。

 森の奥の盗賊たちも見える。

 西二十、南六、北四。

 その動きは、青白い駒みたいに頭の中を流れていく。

 父が隣に立つ。

「緊張してるか」

「してる」

「俺もだ」

「嘘つけ」

「少しはな」

 父は軽く肩を回した。

 全然少しに見えない。楽しそうにすら見える。ほんと何者なんだよ。

 やがて、乾いた音が響いた。

 西の罠だ。

「来た」

 俺は息を吸う。

「西二十。南六。北四。父さん、まず北」

「了解」

 父が闇へ消える。

 俺は広場で叫んだ。

「西、先頭三人詰まってる! 押せ、でも出るな!」

 村人たちが長い棒を突き出し、倒木越しに押し返す。

 盗賊たちの怒声が上がる。

「なんだこれ!」

「道が塞がってるぞ!」

「火を寄こせ!」

 いいぞ、混乱しろ。

 その間に北では、父が最初の一人を沈めた。

「北、残り三! 一人回り込む!」

 声を飛ばす。

 父は迷わず動く。

 そしてそのたびに敵が消える。

 やっぱりおかしい。いや味方だから助かるけど。

 倉庫方面でミリアが子供たちを落ち着かせているのも見える。

 泣きそうな子の背中を叩きながら、「大丈夫、大丈夫」と言って回っている。

 この状況であれができるのは強い。


 父の声が北から飛ぶ。

「一人逃げた!」

「放置! 侵入優先!」

 西はまだ詰まり、南もそろそろ板を踏み抜く頃。

 全部が盤面だ。

 頭が熱いのに、思考だけは冷える。

 やれる。

 この一キロの中なら、やれる。

読んでいただき、ありがとうございます!

もし良ければブクマや評価をつけていただけると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ