表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第一章:外れスキルと辺境の村

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/23

第三話:村を襲う盗賊団

 集会所には、いつもの牧歌的な空気がなかった。

 村長、狩り経験のある男たち、父、母、そして俺とミリア。全員の顔に緊張が浮かんでいる。


「本当に三十人もいるのか?」

 村長が青い顔で聞く。

「十中八九それくらいだ」

 父が答える。

「子供の見間違いでは」

「ない」

 父の一言で空気が黙る。

 圧が強い。

 普段はただの無口な農民っぽいくせに、こういう時だけやたら説得力がある。

 村長が唾を飲み込んだ。

「どうする。男を集めて迎え撃つしか……」

「無理だな」

 父は即答した。

「相手は襲うことに慣れてる。こっちは農具持ちの村人だ。正面からやれば潰される」

 沈黙。

 誰も反論できない。


 そこで俺は口を開いた。

「まとめて来られるから無理なんだ」

 視線が集まる。痛い。俺は目立ちたくない派なんだが。

「分ければいい」

「分ける?」

 ミリアが聞き返す。

 俺は地面に村の見取り図を描いた。

「西からの森道が本命。狭い。倒木と石でさらに塞げば、先頭が止まって後ろが詰まる。南は畑道、水路を外して踏み抜かせる。北の獣道は細い。少人数しか通れない」

「それで」

「相手が一度に村へ入れないようにする。焦って分かれたところを、こっちは各個に叩く」

 狩人のゲイルが目を細める。

「なるほど。分断か」

「そう。それに相手は村の構造をちゃんと知らない。こっちは知ってる」

 正確には俺が立体で知ってる。

 村長が腕を組む。

「だが、それで勝てるのか」

「勝つんじゃなくて崩す」

 俺は西の入口を指した。

「楽に奪えると思ってた村が、夜の暗闇でいきなり予定外の動きをしたら、盗賊は混乱する。見えない、進めない、どこに敵がいるかわからない。それだけで統率は崩れる」

「お前、なんでそんなことがわかる」

「悪い奴って、予定が狂うと弱いから」

 前世知識です。

 小物管理職と盗賊はだいたい同じだ。予想外に弱い。

 母が静かに口を開く。

「でも、敵の動きを読む人が必要ね」

「いる」

 父が俺を見た。

 うわ、そこで振るか。

 俺は観念して言う。


「たぶん、夜でも敵の位置がわかる」


 ざわめきが起こる。

「どういうことだ?」

 村長が問う。

「森のどこに何人いるか、だいたい。だからどっちから回るか、今どこにいるか、伝えられる」

「そんなことができるの?」

 ミリアがじっと俺を見る。

 その視線が鋭い。

 全部はわからなくても、何かおかしいと気づいている目だ。

「よくわかんないけど、見える」

「……」

 ミリアはさらに何か言いたげだったが、今は飲み込んだ。

 助かる。

 父が言う。

「今夜はレインの指示を優先する」

「子供に?」

 村長の顔が微妙に歪む。

 父は平然と言った。

「意地を張って死にたいなら止めん」

 正論が強い。

 村長は苦い顔で頷いた。

 作戦は決まった。

 西を詰まらせる。

 南は足止め。

 北は少数侵入を叩く。

 中央には明かりを多く置いて人がいるように見せ、実際の戦力は入口付近に集中させる。

 音の罠も使う。桶、板、縄。触れれば鳴るようにする。

 会議の後、村人たちは一斉に動き始めた。

 その中でミリアが俺の隣へ来た。

「ねえ」

「何」

「あんた、ほんとに見えてるの?」

「なんとなく」

「便利な言葉ね、それ」

「便利だろ」

 ミリアはため息をついた。

「でも、今のあんた、ちょっと怖い」

「褒め言葉?」

「違う」

 言い切られた。

 でも彼女は離れない。

「で、私に何やれって?」

 そう聞いてくる。

 この子、いいな。

「倉庫組の手伝い。子供たちの面倒見て」

「了解、軍師様」

「その呼び方やめろ」

「似合ってる」


 全然嬉しくない。

 でも、その軽さに少し救われた。

 夜が近づく。

 森の奥で、盗賊たちが動き始めた。

 西に二十、南に六、北に四。

 予想通りだ。

 俺は息を吸う。

 怖い。

 でも、頭は妙に冷えていた。

読んでいただき、ありがとうございます!

もし良ければブクマや評価をつけていただけると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ