表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第三章:ダンジョンと指名依頼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/23

第二十二話:ダンジョン前夜

 初ダンジョンが決まると、村の空気がほんの少し変わった。

 いや、正確にはうちの周囲だけだ。

 母は保存食を準備し、ミリアは薬草や包帯をまとめ、ガロンはなぜか朝から丸太を担いで走っていた。

「何してんの」

 俺が聞くと、ガロンは汗だくの笑顔で答える。

「鍛えてる!」

「今さら?」

「今さらでもやる!」

 偉いのか馬鹿なのか判断に困る。

 たぶん両方だ。

 俺は俺で、庭先に棒切れや石を並べていた。

 戦えないなら、戦えないなりの準備がいる。地形が見えるとしても、実際にどう指示を飛ばすか、狭い通路で誰をどこに置くか、混乱した時にどう体勢を整えるか。

 頭の中だけでは足りない。

 だから簡単な模擬配置を作って、ミリアとガロンを付き合わせた。

「ガロンのために説明だが、ダンジョンは地下にできた迷宮のことだ。昔から世界のあちこちにあって、中には魔物が住み着く。」

「迷宮って……自然にできるの?」

「さあな。誰が作ったかは知らんが、奥には宝や古い遺物が残ってることが多い」

「例えばこれが通路だとして」

「狭っ」

「地下迷宮だぞ?広いわけないだろう、で、ガロンはここ」

「前だな!」

「前。ミリアは一歩後ろの右」

「了解」

「俺はさらに後ろ」

 ミリアが眉をひそめる。

「かなり後ろね」

「当然だろ。俺が前にいたら終わる」

「そこは否定しない」

 ガロンが棒切れを踏みそうになったので、俺は慌てて止めた。

「踏むな」

「おお、すまん」

「謝れるのえらいな」

「俺、素直だぞ!」

「知ってる」

 ほんとに知ってる。

 この大型駒、扱い方はかなりシンプルだ。

 敵が前にいたら止める。押す。殴る。細かい判断は期待しない。その代わり、指示を短く、はっきり出す。

 逆にミリアは細かい指示が通る。

 弓はまだ実戦レベルではないが、視野が広く勘もいい。何より、俺の言いたいことを半分くらい先読みする時がある。

 ……相性は悪くない。

 夕方、準備が一段落した頃、父が庭に出てきた。

 何も言わず、俺が置いた石や棒の配置を見る。

「悪くない」

「珍しく褒めた」

「珍しいか?」

「かなり」

 父は苦笑し、棒切れを一本拾った。

「ただ、下がる合図を決めろ」

「合図?」

「戦闘中は長い説明が通らん。『引け』『右』『止まれ』、使う言葉は最初に固定しろ」

 なるほど。

 それはかなり実用的だ。

「あと、ガロン」

「おう!」

「突っ込むな」

「わかった!」

「絶対わかってない」

 ミリアが即答する。

 父も否定しなかった。

「だからレイン、お前が止めろ」

「はいはい」

 父は少しだけ視線を細めた。

「お前、前より顔つきが変わったな」

「そう?」

「腹を括る顔になってる」

 その言葉に、少しだけ胸がざわつく。

 前世の俺は、腹を括る前に言い訳を探していた気がする。

 でも今は、怖くても先に進む方を選べる。

 それが成長なのか、前世で死んだせいで感覚が変わったのかはわからない。


 夜、ミリアが家の裏までやってきた。

「起きてる?」

「うん」

 外に出ると、村は静かだった。遠くで犬が鳴き、風が畑を撫でている。

 ミリアは少しだけ言いにくそうにしてから、弓を見せた。

「明日、これ持ってく」

「知ってる」

「……最近ほんと腹立つ」

「ごめんて」

 彼女は小さく息を吐く。

「でもちょっと怖い」

「何が」

「初めてでしょ。ダンジョン」

 図星だった。

 俺も怖い。かなり。

「怖いよ」

 素直に言うと、ミリアは少しだけ驚いた顔をした。

「……言うんだ」

「言うよ。怖くないわけない」

「そっか」

「でも、やるしかない」

 しばらく沈黙が落ちた。

 やがてミリアは、俺の袖を軽く引いた。

「じゃあ、ちゃんと指示して」

「うん」

「私もちゃんと動くから」

 その言葉は、思った以上に心強かった。


 仲間がいる。

 前にガロン、横にミリア、そして少し離れた場所に父と母。

 一人じゃない。それだけで、怖さは少し減る。

 明日は迷宮。初めての本当の実地試験だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ