第二十話:村へ戻る、新しい仲間
村へ戻る道は、行きより少しだけ賑やかだった。
理由は単純で、ガロンがいるからだ。
「森だ!」
「見ればわかる」
「川だ!」
「それも見ればわかる」
「鳥だ!」
「うるさい」
ミリアが容赦なく切っていく。
だがガロンはまったくへこたれない。むしろ楽しそうだ。
体力もおかしい。荷物を二つ背負っているのに平然としている。
「ほんと便利ね、この人」
ミリアがぼそっと言う。
「聞こえてるぞ! 便利って褒め言葉だろ!」
「まあ……うん」
絶妙に否定できない。
俺は歩きながら、今回の町行きで得たものを整理していた。
ギルドとの繋がり。
倉庫地下の発見。
密売グループの処理。
支部長への貸し。
そして何より、ガロンという新しい戦力。
強い。単純。大きい。扱いやすい。
前に出す駒としてはかなり優秀だ。
もちろん、粗い部分も多い。隠密は無理。細かい判断も苦手。勢いで床を抜く。
でも、弱点がわかりやすいというのは管理しやすいということでもある。
仲間としてはかなり悪くない。
「レイン」
「何」
父が前を向いたまま言う。
「何考えてる」
「ガロンの運用」
「人を兵器みたいに言うな」
横からミリアが言う。
でも父は少しだけ笑っていた。
「間違ってもいない」
「父さんまで」
ガロンはよくわかっていない様子で胸を張る。
「俺、強いぞ!」
「うん、知ってる」
「あと飯もいっぱい食う!」
「それも知ってる」
「じゃあ大丈夫だ!」
何がどう大丈夫なのかは不明だが、本人が大丈夫そうなのでまあいいかという気になってくる。不思議な説得力だ。
村が見えてきたのは夕方だった。
小さな屋根の並び、畑、井戸、森。
見慣れた景色なのに、町を一度見た後だと少し印象が変わる。
狭い。でも、その狭さが今は心地いい。
村人たちは父と俺たち、それから見慣れない巨体を見て固まった。
「……誰だあれ」
「でか」
「家畜小屋に入るか?」
失礼だな。でも気持ちはわかる。
母が家の前に出てきて、俺たちを見た後、最後にガロンを見上げた。
「大きいわね」
「よく言われる!」
ガロンが元気よく返す。
母はにっこり笑った。
「ご飯たくさん炊かないと」
「いい人だ!」
早いな懐くの。
父が短く説明する。
「しばらくうちで世話する」
「そう。床は補強しないとね」
「なんで最初の心配がそこなの!?」
ミリアが吹き出した。
いやでも正しいな。実際必要だ。
夜、食卓はちょっとした宴会みたいになった。
報奨金の話、町の話、ギルドの話、地下倉庫の話。村人たちも入れ替わりで顔を出し、ガロンはそのたびに「俺はでかい!」と自己紹介していた。
自己紹介としては弱い気もするが、覚えやすさはある。
食事の後、家の外へ出る。
夜風が心地いい。
村の中の人の位置が、エリアサーチに青白く浮かぶ。見慣れた光景だ。けれど今は、その一つ外側に広がる世界も少しだけ現実味を増していた。
ミリアが隣に立つ。
「変わったわね」
「何が」
「村」
「俺たちじゃなくて?」
「それも」
彼女は少しだけ笑う。
「前より騒がしくなりそう」
「ガロンいるしな」
「絶対そう」
少し離れた場所では、ガロンが父に腕相撲で挑んで、あっさり負けていた。
「ぬおおおお!」
「静かにしろ」
平和だな。
でも、その平和の下で、俺はちゃんとわかっている。
ここで終わりじゃない。
町に出れば依頼がある。敵も味方も増える。もっと厄介な秘密も、もっと使える弱みも、きっといくらでも転がっている。
そして俺の能力はそれを見つけてしまう。
情報は力だ。
仲間が増えれば、その力はもっと形になる。
前に立つ巨体がいて、横に幼馴染がいて、後ろには元Sランクの父がいる。
だいぶ盤面が整ってきた。
「……悪くない」
小さく呟く。
「何が?」
ミリアが聞く。
「うちの戦力」
「人を駒みたいに」
「否定はしない」
「ひど」
そう言いながらも、彼女は少しだけ楽しそうだった。
夜空を見上げる。
星は変わらず綺麗だ。
でも俺の世界は、もう村の中だけじゃない。
この視界を持ったまま、これから外へ出ていく。
そこで誰を味方につけて、何と戦うのか。
そもそも戦わないといけないのか。何もわからない。
でも、少なくとも今は。
次の依頼が少し楽しみだった。
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