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半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第二章:辺境ギルドとおバカな巨人

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第十八話:でかい駒、増える

 倉庫街の件は、ギルドにとって予想以上の当たりだったらしい。

 捕まえた連中は、町の商人から流れた品を横流ししていた小規模な密売グループだった。大物ではないが、放置すると厄介なタイプ。

 支部長は珍しく機嫌が良かった。

「倉庫地下の発見といい、今回といい、ずいぶん仕事が早いな」

「勘のいい奴がいるからな」

 父がさらっと俺を見る。やめろ注目を集めるな。

 ガロンは胸を張った。

「あと俺が強い!」

「それも間違ってはない」

 実際、間違ってないのが腹立つ。

 ミリアはカウンター横で呆れたように肩をすくめた。

「でかい駒よね」

「駒ってなんだ?」

 ガロンが聞く。

「強くてわかりやすくて、前に置いとくと相手が嫌がるやつ」

「おお! 褒められてる!」

「まあ半分くらいは」

 喜ぶんだ、それで。


 俺は椅子に腰かけながら、ガロンを改めて観察した。

 巨体。膂力。素直。単純。考えるのは苦手。でも指示に従う気はある。

 ……強いな、これ。

 父みたいな完成された化け物とは違う。粗い。隙も多い。だが、扱い方を間違えなければかなり役立つ。

 何より、読みやすい。

 腹が減る、嬉しい、困る、悔しい、その全部が顔に出る。こういう相手とは組みやすい。


 支部長が報酬の袋を机に置いた。

「今回の分だ」

 中身は銀貨と銅貨。思ったより多い。

 ミリアが目を丸くする。

「けっこう入ってる」

「危険込みだからな」

 支部長はそこで少しだけ真面目な顔になって一言。

「ただし、あまり表立って“レインの有能により解決した”は言わない方がいい」

「あんたもそう思うか」

父も合わせるように言う。

「当然だ。便利すぎる人間は囲われる」

 支部長の言い方は軽いが、目は笑っていなかった。

 俺は黙って頷く。

 やっぱりそうか。

 町に出れば、村よりずっと多くの人間がいる。善人も悪人も、利用価値を嗅ぎつける奴も。

「だから表向きはこうだ」

 支部長が指を立てる。

「エドの経験、ミリアの観察、ガロンの力、そしてレインの勘がいい。これで通す」

「勘が便利ワードすぎる」

「便利だからな」

 父と支部長の返答が揃った。

 ちょっと嫌だなこの一致。


 その後、ギルドの食堂スペースで遅い昼食を取ることになった。

 ガロンは山盛りの肉とパンを頼み、ものすごい勢いで食べている。

「うまい!」

「幸せそうだな」

 俺が言うと、ガロンは真顔で答えた。

「飯は大事だぞ!」

「知ってる」

「あと仲間も大事だ!」

「急にいいこと言うな」

「今のいいことだったのか?」

「たぶん」

 ガロンは満足そうに頷く。

 バカだ。

 でも嫌いじゃない。

 ミリアがスープを飲みながら、ぼそっと言う。

「この人、騙されやすそう」

「よく言われる!」

「自覚あるんだ」

「でもお前らは騙さない顔してる!」

 それを真っ直ぐ言えるの、ちょっと強いな。


 俺は少しだけ視線を逸らす。

 "騙さない"か。

 俺はたぶん、必要なら相手の秘密も弱みも使う。そういう戦い方を選ぶつもりだ。

 でも少なくとも、仲間にする相手には別の線を引きたい。

 そう思うくらいには、こいつらといるのは悪くなかった。


「ガロン」

「おう!」

「今、定住してるのか」

「してない!」

「そう」

「依頼受けて、飯食って、寝て、また依頼!」

「すごくシンプルだな」

「シンプルが一番!」

 たぶん生活力は低い。

 だが、だからこそ声をかけやすい。

 俺は父を見た。

 父は少しだけ面白そうに口元を上げる。

 完全に読まれているな。


「……しばらく村に来るか?」


 そう言うと、ガロンは肉を咀嚼したまま止まった。

「村?」

「飯は出る。たぶん」

「たぶんなんだ」

「畑仕事も手伝ってもらう」

「俺、力仕事得意!」

「知ってる」

 ミリアが横から言う。

「でも家潰さないでよ」

「潰さない! たぶん!」

「その“たぶん”不安しかないんだけど」

 ガロンはしばらく真剣な顔で考え、やがて大きく頷いた。

「行く!」

 即決だった。

「早いな」

「飯と仲間があるなら十分だ!」


 前向きすぎる。

 でも、その単純さが妙に頼もしかった。

 こうして、俺たちの仲間は、驚くほどあっさり増えることになった。

読んでいただき、ありがとうございます!

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