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半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第二章:辺境ギルドとおバカな巨人

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第十七話:倉庫街の小競り合い

 追加の五人は、旧倉庫街の裏路地から現れた。

 剣、棍棒、短弓。装備は雑だが、一般人ではない。明らかに“そういう仕事”に慣れた連中だ。

 倉庫の中の四人と合流されると面倒になる。

「父さん」

「ん?」

「今なら外の五人だけ切り離せる」

「中は動くか」

「まだ気づいてない」

 父は短く頷いた。

「ガロン」

「おう!」

「正面に出るな。裏路地を塞げ」

「塞ぐだけか?」

「まずはな」

「任せろ!」

 でかい図体が物陰へ消える。隠密には向かないが、通路封鎖には最適だ。あいつ一人で壁みたいなものだし。

 ミリアは小声で聞いてきた。

「私は?」

「離れてて」

「却下」

「なんで」

「戦えないあんたがやられたら困る」

 妙に正しいことを言うな。

 仕方ないので、俺の近くで補助に回ってもらうことにした。弓はまだ未熟でも、視界のある場所でなら十分役立つ。戦えない俺よりも・・・

 外の五人が倉庫へ近づく。

 先頭の二人が裏口へ、残り三人が正面側へ回る流れだ。

「今」

 父が動いた。

 正面に出た三人のうち、一番後ろの男が何か気づく前に首筋へ一撃。倒れる。残る二人が振り向いた瞬間、父はもう懐にいた。

 速い。強い。さすがだ。

「敵襲――」

 叫びかけた男の腹に拳。息が詰まり、声にならない。最後の一人が剣を抜くが、

「右足」

 俺の声に合わせて父が踏み込み、膝を払う。倒れたところを鎌の柄で沈める。

 正面三人、終了。


 裏口側の二人は気づいて合流しようとしたが、そこへガロンが立ちはだかった。

「どけ!」

「嫌だ!」

「なんだでかいの!」

 そのやり取りの次の瞬間、ガロンの拳が棍棒持ちの男を吹っ飛ばした。

 重い。

 技術は粗い。でも純粋な質量と膂力で押し潰すタイプだ。

 もう一人は短弓を引こうとしたが、ミリアの放った矢が足元に突き刺さる。

「ひっ」

「外してあげたけど、次は当てるわよ」

 言い方はそれっぽいが、たぶん本人も心臓バクバクだろう。手が少し震えているのが見える。

 それでも撃ったのは偉い。

 短弓の男が怯んだ隙に、ガロンが突っ込む。

 抱きつくような勢いで押し倒し、そのまま地面へ。

「よし! 捕まえた!」

「押し潰してるだけでは」

 俺が呟くと、父が短く答えた。

「だが有効だ」

 確かに。


 問題は倉庫の中だ。

 外の騒ぎで一階の男が扉へ向かい、二階の男も窓から覗こうとしている。地下の一人はまだ動かない。たぶん重要物の見張りだ。

「中、二階が窓。正面の扉、もうすぐ開く」

 父が倉庫正面へ向かう。

 扉が開いた瞬間、中の男が状況を把握する前に顔面へ肘打ち。閉店である。

「中、残り三」

「地下は?」

「まだ」

 だが二階の男が逃走に切り替えた。裏窓へ移動。倉庫裏の抜け道を使う気だ。

「ガロン! 裏! 窓から一人!」

「おう!」

 ガロンが振り向く。

 裏窓から飛び出した男は、目の前に壁みたいな巨体が立っていて固まった。

「でかっ」

「知ってる!」

 返答がいちいち元気だな。

 男は方向転換して走ろうとしたが、ガロンに肩を掴まれ、そのまま宙を舞って地面へ転がった。

「うわあ」

 ミリアが少し引いている。

 俺も引いてる。

 味方だから頼もしいけど、敵にしたくないタイプだ。

 残るは地下の一人。

 俺は倉庫内部を探る。

 地下の男は逃げない。箱を動かしている。隠し物を持っていく気だ。

「父さん、地下の奴、何か持って逃げそう」

「案内しろ」


 俺と父が倉庫へ入る。

 中は表向き空倉庫だが、床板の一部が開いていて地下へ降りる梯子があった。

 降りた先の小部屋で、最後の男が袋を抱えていた。

 振り向いた顔には焦りと敵意が混ざっている。

「誰だてめえら!」

「ギルドの確認依頼だ」

 父が答える。

「二人は無理、降参する・・・」

 そんなわけない。

「嘘をつくな、手元に隠し短剣持ってるだろ」

 俺が言うと、男の顔が凍った。

「なんでそれを」

「さあな」

 父が一歩踏み込む。

 勝負は一瞬だった。

 短剣をかわし、手首を極め、壁へ叩きつける。終了。

 俺は床に転がった袋を拾った。

 中には薬草、香辛料、そして小さな金属片。正規ルートではない品だろう。

 密売、横流し、そのあたりか。


「軽い確認依頼じゃなかったな」

 俺が言うと、父は淡々と答えた。

「依頼なんてだいたいそうだ」

 なんか妙に納得してしまった。

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