第十七話:倉庫街の小競り合い
追加の五人は、旧倉庫街の裏路地から現れた。
剣、棍棒、短弓。装備は雑だが、一般人ではない。明らかに“そういう仕事”に慣れた連中だ。
倉庫の中の四人と合流されると面倒になる。
「父さん」
「ん?」
「今なら外の五人だけ切り離せる」
「中は動くか」
「まだ気づいてない」
父は短く頷いた。
「ガロン」
「おう!」
「正面に出るな。裏路地を塞げ」
「塞ぐだけか?」
「まずはな」
「任せろ!」
でかい図体が物陰へ消える。隠密には向かないが、通路封鎖には最適だ。あいつ一人で壁みたいなものだし。
ミリアは小声で聞いてきた。
「私は?」
「離れてて」
「却下」
「なんで」
「戦えないあんたがやられたら困る」
妙に正しいことを言うな。
仕方ないので、俺の近くで補助に回ってもらうことにした。弓はまだ未熟でも、視界のある場所でなら十分役立つ。戦えない俺よりも・・・
外の五人が倉庫へ近づく。
先頭の二人が裏口へ、残り三人が正面側へ回る流れだ。
「今」
父が動いた。
正面に出た三人のうち、一番後ろの男が何か気づく前に首筋へ一撃。倒れる。残る二人が振り向いた瞬間、父はもう懐にいた。
速い。強い。さすがだ。
「敵襲――」
叫びかけた男の腹に拳。息が詰まり、声にならない。最後の一人が剣を抜くが、
「右足」
俺の声に合わせて父が踏み込み、膝を払う。倒れたところを鎌の柄で沈める。
正面三人、終了。
裏口側の二人は気づいて合流しようとしたが、そこへガロンが立ちはだかった。
「どけ!」
「嫌だ!」
「なんだでかいの!」
そのやり取りの次の瞬間、ガロンの拳が棍棒持ちの男を吹っ飛ばした。
重い。
技術は粗い。でも純粋な質量と膂力で押し潰すタイプだ。
もう一人は短弓を引こうとしたが、ミリアの放った矢が足元に突き刺さる。
「ひっ」
「外してあげたけど、次は当てるわよ」
言い方はそれっぽいが、たぶん本人も心臓バクバクだろう。手が少し震えているのが見える。
それでも撃ったのは偉い。
短弓の男が怯んだ隙に、ガロンが突っ込む。
抱きつくような勢いで押し倒し、そのまま地面へ。
「よし! 捕まえた!」
「押し潰してるだけでは」
俺が呟くと、父が短く答えた。
「だが有効だ」
確かに。
問題は倉庫の中だ。
外の騒ぎで一階の男が扉へ向かい、二階の男も窓から覗こうとしている。地下の一人はまだ動かない。たぶん重要物の見張りだ。
「中、二階が窓。正面の扉、もうすぐ開く」
父が倉庫正面へ向かう。
扉が開いた瞬間、中の男が状況を把握する前に顔面へ肘打ち。閉店である。
「中、残り三」
「地下は?」
「まだ」
だが二階の男が逃走に切り替えた。裏窓へ移動。倉庫裏の抜け道を使う気だ。
「ガロン! 裏! 窓から一人!」
「おう!」
ガロンが振り向く。
裏窓から飛び出した男は、目の前に壁みたいな巨体が立っていて固まった。
「でかっ」
「知ってる!」
返答がいちいち元気だな。
男は方向転換して走ろうとしたが、ガロンに肩を掴まれ、そのまま宙を舞って地面へ転がった。
「うわあ」
ミリアが少し引いている。
俺も引いてる。
味方だから頼もしいけど、敵にしたくないタイプだ。
残るは地下の一人。
俺は倉庫内部を探る。
地下の男は逃げない。箱を動かしている。隠し物を持っていく気だ。
「父さん、地下の奴、何か持って逃げそう」
「案内しろ」
俺と父が倉庫へ入る。
中は表向き空倉庫だが、床板の一部が開いていて地下へ降りる梯子があった。
降りた先の小部屋で、最後の男が袋を抱えていた。
振り向いた顔には焦りと敵意が混ざっている。
「誰だてめえら!」
「ギルドの確認依頼だ」
父が答える。
「二人は無理、降参する・・・」
そんなわけない。
「嘘をつくな、手元に隠し短剣持ってるだろ」
俺が言うと、男の顔が凍った。
「なんでそれを」
「さあな」
父が一歩踏み込む。
勝負は一瞬だった。
短剣をかわし、手首を極め、壁へ叩きつける。終了。
俺は床に転がった袋を拾った。
中には薬草、香辛料、そして小さな金属片。正規ルートではない品だろう。
密売、横流し、そのあたりか。
「軽い確認依頼じゃなかったな」
俺が言うと、父は淡々と答えた。
「依頼なんてだいたいそうだ」
なんか妙に納得してしまった。
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