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半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第二章:辺境ギルドとおバカな巨人

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第十六話:物騒が続く

 隠し通路の発見は、ギルドでちょっとした騒ぎになった。

 管理人が旧帳簿と銀貨を抱えて走り、受付の女性が上司を呼び、父が淡々と事情を説明し、ガロンが「俺もいた!」を三回くらい主張した。

 いや、いたのは本当だけど。


「まさか倉庫地下に旧保管室があるなんて……」

 受付の女性が頭を抱える。

 奥から出てきた年配の男――支部長らしい――は帳簿をめくり、眉間に皺を寄せていた。

「これは面倒だな」

「面倒?」

「かなり面倒だ」

 俺が聞くと、支部長はあっさり答えた。

「古い領主家時代の保管記録が出てきた以上、所有権や未報告の資産整理が必要になる」

「面倒な爆弾だ」

「言い得て妙だな」

 前世でもたまにあった。見つからない方が平和だった資料ってやつだ。

 だがギルドとしては損だけではないらしい。未整理の保管物が正式に回収できれば利益にもなる。

 その結果、俺たちには追加報酬が出ることになった。

「おお!」

 ガロンが歓声を上げる。

「飯が増える!」

「思考が単純」

 ミリアが呆れたように言う。

 だが実際、初めて町でやったこととしては上々すぎる成果だった。

 その後、支部長が俺たちを見て言った。

「一つ頼みがある」

 嫌な予感。

「倉庫整理に関連して、もう一件だけ軽い確認依頼を受けてほしい」

「軽い?」

 父が聞く。

「旧倉庫街の外れに、使われていない物置がある。記録上は空のはずだが、最近になって夜に人影が出入りしているという話がある」

 俺は少しだけ身を乗り出した。

「盗賊?」

「まではわからん。ただ、不法占拠か密売の類かもしれん」

「で、軽いの?」

「確認だけならな」

 その言い方、だいたい軽く終わらないやつだろ。

 でも正直、興味はある。

 町の中で人が隠れる場所。しかも旧倉庫街。俺の能力との相性が良すぎる。

「受けるの?」

 ミリアが小声で聞く。

 父は一瞬だけ俺を見る。

 完全に判断を投げてきたな。

「確認だけならいける」

 俺は言った。

「場所と構造が見えれば、危ないなら近づかなくていい」

 父が頷く。

「ならやる」

 ガロンが胸を叩いた。

「任せろ! 怪しい奴は殴ればいい!」

「確認だけって言ってるだろ」

「じゃあ確認してから殴る!」

「精度は上がったけど駄目だ」



 旧倉庫街は町の西寄り、川沿いにあった。

 人通りは中心街より少なく、石造りの古い建物が並んでいる。壁には苔、木戸は軋み、夕方の光が長い影を落としていた。

 いかにも怪しい。

 俺はエリアサーチを広げる。

 問題の物置は、二階建ての小さな倉庫。表向きは空だが、内部には人が三人。地下に一人。箱が十個ほど。裏に抜け道。なるほど、かなり黒い。

「誰かいる」

「何人だ」

 父の声が低くなる。

「中に三。地下に一。裏口あり」

 父、ミリア、ガロンが一斉に俺を見る。

「何気に一番物騒な報告ね」

 ミリアが言う。

「中にいたらどうする」

「表と裏を見張って、出てくるの待つ」

「賛成だ」

 父が即答した。

 正面突破は避ける。いい判断だ。

 ガロンだけが少し不満そうだった。

「殴らないのか」

「まだ」

「まだ?」

「まだ」

 言い聞かせるように繰り返す。

 しばらく待つと、倉庫の二階にいる男の一人が動いた。窓際。帳簿のようなものを見ている。もう一人は一階。残り二人は地下と裏口近く。

 密売か横流しだろうか。

 だが、その時、別の人影が近づいてきた。

 五人。

 武装。

「……追加」

「何人」

「こっち来る。たぶん仲間」

 父の目が細くなる。

「面倒だな」

「うん」

 軽く見るだけと言った町での初依頼は、やっぱり軽く終わりそうになかった。

読んでいただき、ありがとうございます!

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