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半径1kmの神様  作者: ずむずむ
第二章:辺境ギルドとおバカな巨人

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第十四話:地下倉庫の依頼

 案の定、地下倉庫の依頼はギルドが少し持て余していた。

 地下倉庫の一部が古く、通路が狭いうえに崩れかけている。

 荷物の搬出が必要だが、狭い・暗い・危ないの三拍子。力仕事なのに、普通の前衛は嫌がる。

 そこで父が受付へ話を通し、俺たちは依頼の詳細を聞くことになった。

「正式には登録冒険者向けなんですが……」

 受付の女性が困った顔をする。

 父は平然と答えた。

「責任は俺が持つ」

「エドさんがそう言うなら……」

 信用が重い。元Sランクの名前が効いてるんだろう。


 依頼の場所はギルド裏手の古い倉庫だった。

 石造りの建物で、地上は普通の荷置き場だが、問題は地下らしい。

 現地で待っていた管理人の老人が、俺たちを見るなり顔をしかめる。

「なんだこの子供と大男は」

「役に立つ」

 父が即答。

 雑だが父が言うと説得力が出るのが悔しい。

 老人は半信半疑だったが、もう人手がないのだろう。渋々案内してくれた。

 地下へ続く階段は狭く、ひんやりとした空気が漂っている。湿気と土の匂い。薄暗い。普通なら嫌な空間だ。

 だが俺にはむしろ見やすい。

 エリアサーチで地下構造をなぞる。

 通路、支柱、荷物、崩れた場所、空洞。

 ……うん、かなり危ない。


「止まれ」

 階段を下りたところで俺が言うと、全員が振り返った。

「正面の通路、先が少し沈んでる。床が弱い」

 管理人の老人が怪訝そうな顔をする。

「見えもしないのに何を」

 ガロンが一歩前へ出ようとしたので、俺は慌てて止めた。

「特にお前は駄目」

「なぜ!」

「重いから」

「なるほど!」

 素直すぎる。

 父が床を槍の柄で軽く突くと、先の石板がぱきっと割れた。

 老人の顔色が変わる。

「……なんでわかるんだ」

「今日は調子がいい」

 俺は言いながら、地下の全体像を頭に入れる。

 奥に荷箱が十数個。そのうち半分は無事。だが手前の支柱一本がかなり危うい。うっかり重心をかければ天井の一部が落ちる。

 つまり、順番が大事だ。


「荷物は奥からじゃなく、右側の軽い箱から運ぶ」

 俺が言うと、管理人が眉をひそめた。

「普通は奥の大箱からだ」

「それやると左の支柱に負荷がかかる。落ちる」

「何を根拠に」

「勘」

 老人が嫌そうな顔をする。

 父が横から言った。

「その勘で盗賊団を潰したんだ、こいつに任せろ」

「……わかった」

 逆によくそれで納得したな。勘だぞ。

 今後のために「勘」じゃない言い回しでも考えておくか。

 

 早速、荷作業が始まった。

 ガロンが箱を持つ。

 いや、持ち方が雑だな。

「待て待て、右肩じゃなくて両手」

「こうか?」

「そう。あと足元見ろ」

「足元苦手!」

「どういうことだよ」

 ミリアが思わず笑う。

 彼女は地上で薬草の納品を済ませた後、心配だからとついてきたらしい。危ないから上で待てと言ったが、「あんたが一番危なっかしい」と返された。理不尽だ。

 ガロンはバカだが、力は本物だった。

 大箱を一人で抱えてもふらつかない。狭い通路でも、指示通りに動けば問題なく運び出せる。

 ただし、指示通りに動けば、だ。

「左!」

「おう!」

「そっちじゃない、俺から見て左!」

「わからん!」

「わからんのに感覚で動くな!」

 うるさい地下だな。

 だがそんな騒がしさの中でも、作業は順調だった。

 荷箱が一つ、二つ、三つと外へ運ばれていく。管理人の老人も途中から無言になり、俺の指示を前提に動き始めた。


 そして奥の大箱に手をつけようとした時、エリアサーチの端で違和感が走る。

 左の壁の向こう。

 空洞がある。

 しかもただの空洞じゃない。細い通路みたいに伸びている。

「……隠し通路?」

 思わず呟いた。

「何だ?」

 父が聞く。

 俺は壁を指す。

「この先、空いてる」

「は?」

「壁の向こう。細い通路がある」

 管理人が首を振る。

「そんなもの、あるわけが」

 父が壁を叩く。鈍い音。

 さらに位置をずらして叩く。今度は少し空洞っぽい響き。

 老人の目が丸くなる。

「本当に……?」

 ガロンが嬉しそうに叫ぶ。

「秘密の道か!? 宝か!?」

「急にテンション上がるな」

 だが俺も少し興奮していた。


 倉庫の地下。

 崩れかけた通路。

 その先の隠し道。

 こういうの、冒険者っぽい。

 いや実際そうなのかもしれない。

 父は短剣で壁の目地を削り、薄くなった部分を崩した。石が落ち、向こうに細い通路が口を開ける。

 冷たい空気が流れてきた。

 暗い。

 そして、奥に何かある。

 俺は口元を歪めた。

「当たりっぽいな」

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