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『Returnees』〜残された世界と、帰還した「親友の娘」〜  作者: NewSankin


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【2-5】怪物の片鱗

 錦山たちが負傷者の搬送と現場検証を始める中、和樹はただ泣きじゃくるあやめをそっと抱き上げた。


「あやめ、大丈夫だ。もう怖くない。おじさんが来たからな」


 和樹はあやめを社長室からそっと連れ出し、誰もいない廊下の隅で優しく背中をさすってやる。あやめは和樹の制服に顔をうずめ、しゃくりあげていたが、やがて少しずつ落ち着きを取り戻してきた。


「……あやめ。何があったか、話せるか?」


 和樹が静かに尋ねると、あやめは小さな声で、途切れ途切れに話し始めた。


「……おばあちゃんと、あそんでた。そしたら、なんか、いやーな、かんじがしたの。こわい、って」

「……うん」

「おばあちゃん、みんなを、おへやにあつめた。でも、こわいおとこのひとたち、はいってきた。……おばあちゃん、なぐられた。ち、いっぱい出てた……」


 あやめの小さな体が、再び震えだす。


「……パパが、いってた。『おとしよりをなぐるやつは、わるいやつだ』って。『わるいやつは、やっつけていい』って。だから、あやめ、やっつけた……」

「…………」

「でも、やっつけたら、こわくなった……。おばあちゃん、ち、いっぱい……。あやめ、こわくて……」


 あやめは再び和樹の胸に顔をうずめ、声を殺して泣き始めた。

 和樹は、その小さな体を強く抱きしめることしかできなかった。

 彼女の華奢な手足のどこに、大人三人を肉塊に変える力があるというのか。


(護……お前、一体どんな教育してやがんだ……)


 和樹の背筋を、冷たい汗が伝う。

 親友の娘は、ただの迷子ではない。

 彼女は、この平和な日常を食い破る、得体の知れない「何か」をその身に宿していた。

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