第九十七話 幼き日
──約十三年前
当時、僕は六の歳だった
「ねぇ、次は僕、どこに行けばいいの?」
石膏で造られた道の真ん中で、白いローブのような物に身を包み、一匹の蛇とマグヌム・ヴェールと書かれた名札を着けた少年が、首を傾げながら、白衣に身を包んだ男性に話しかけている
男性は、二匹の蛇が描かれた名札をつけ、持っている紙の束に目を通した
「……そうですね…次は音階テストですので、12実験室へ向かって下さい」
「はーい!」
元気よくそう返事をし、マグヌムはすぐさま言われた場所へと走っていった
音楽の秀才と呼ばれた男と最良の指揮者と呼ばれた女の間に産まれた、一人の天才
マグヌムと名付けられたその子供は、幼いころから研究者達に、世界最高の音楽家にするための実験を繰り返されていた
苦しい事や強制的な事はなく、実験とはいえマグヌムにとっては気楽なものだった
そして、毎週の実験という名の教育により、マグヌムの音楽の実力は齢六歳とは思えぬほどに成長していた
そんな、何不自由ない生活をしていたマグヌム
だが、この日、マグヌムは研究者にとって予想外の行動に出た
マグヌムは、その実験の帰り道、見慣れぬ紺色の作業着を着た男を見つけた
白衣の男達の目を掻い潜り、好奇心から、その男の後ろを着けていく
「なんだろう、これ…」
普段マグヌムが実験しているM研究所から飛び出し、見つけたのは、倉庫に一時的に放置されていた、洗練された大きな装置だった
機構も機能も一切分からなかったが、まるで、そこに触れろとでも言いたげな機械のスイッチが、マグヌムの好奇心を更に掻き立てる
キラキラとした目で、マグヌムはスイッチを押す
その瞬間、装置に接続されていた機械が、機械の腕で魔力を流し、装置の術式効果を発動させた
生物の、構造から狂わせるその術式は、マグヌムの上半身を歪ませ、腕が、胸が、人という自我を忘れたかのように、複雑に歪む
痛みを伝える神経すらも歪み、マグヌムは、顔が下方向へ歪むまで、その異常に気がつくことが出来なかった
幸い、腕や胸などは、後から来た作業員によって事なきを得たが、頭の機構を治すには限界があり、
「…真っ暗で、静か」
一時の不注意で、マグヌムは視力と聴力を失った




