第九十五話 決着間際
「............ っ...... っっ...... っっ!!」
あり得ぬはずの、クラルスの言葉を聞いている幻想種を、驚愕の表情で見つめ、幻想局は時が止まったかのように動かなくなっていた
…だが、その楽器を見た瞬間、マグヌムの目の色が変わる
その目に籠っていた、驚きと疑問
それが、メミニの影が動くにつれて、恐怖と不安に変貌していった
精神が、元に戻る
マグヌム・"バッハル"である自身が、もう一つの精神であることは分かっている
だから、元に戻れば自身は消え、十五年以上続けた肉体の優位ですら、抵抗していたあの弱者に奪われるだろう
... だめだ
幻想局の、世界最高の管弦楽を達成するためには、私はまだ、消えるわけにはいかない!
十二年間溜め込んでいた、目的を、目標を、バッハルである、私が達成しなければ!
その、強固な精神により、マグヌムの体は知らぬ間に動き始めていた
メミニを、クラルスを、排除するため
目標に、もっと近づくため
自身が、この肉体を保ち続けるため
もはや、握るための筋肉や骨が壊れながらも、マグヌムは拳を振りかぶり、メミニに向かって走っていく
そんな、恐ろしい執念の塊を目に写したクラルスは、楽器を生み出しているメミニの前まで体を動かした
─そして、キャピオから受け取った指揮棒を取り出し、意識を込め、指揮を始める
全ての、視線、音、思考を引き込み、幻想局の劇場であったそこを、クラルスの、たった一人の指揮者による劇場へと変化させた
マグヌムやスペクラートとは違う、思考すらも引き込む圧倒的な実力の指揮
抜け出すことは不可能だ
そう、思われた
─だが、今のマグヌムは、精神で動いてはいない
体が反応し、何も思考しないままに、マグヌムの体は動き始める
拳を握り、停止した体を動かし、迫る
執念の、終わらせないという強い意志の、化物が、クラルスに向かって動いていた
もう、止められない
メミニは間に合わず、指揮棒も効果がない
だが、すでにマグヌムは弱っている
─ならば、最後の手段だ
………一発、受けてみせる
この身で、何の障害物もないこの状態で、マグヌムの一撃を、耐えてみせる




