第九十四話 メミニの感情
「クラルス... 待つ」
足を動かしたその瞬間、腕が後ろに引っ張られた
メミニが立っていた側の腕を捕まれ、抵抗できぬまま後ろに引き寄せられる
体も精神すらも飲み込まれ、自暴自棄のようになっている腕を、メミニに、力強く引っ張られた
「メミニ......」
そうして、メミニへと目線を向けた時
メミニの表情は、普段とは比べ物にならないほどに感情を表にだしていた
不安げで、心配そうな、泣きついてくるような目
こんな、感情的なメミニは見たことがない
絶対にダメだ、行くなと、訴えてくる、繊細で力強いその視線
そして、そのメミニは、普段のように真似をしている訳ではなく、心から、体の底から懇願しているような、精神に刻まれているであろう感情が、メミニの顔に浮かんでいた
心の、精神の底に語りかけてくれるような、メミニの繊細な表情
それは、自分の感情を、体を、戻すにはあまりにも十分すぎた
「あぁ... ありがとう、メミニ...」
感情が、全身が、忘れていた感覚を思い出し、メミニに感謝の歓声をあげる
助けてくれて、思い出させてくれて、ありがとうと
目的を忘れてはならない
マグヌムは、攻撃の対象でありながら、救う対象でもあるのだ
別れた精神を戻すため、本来のマグヌムを取り戻すため、それが、今の自分が動く理由だ
そのための、マグヌムという不協和音を正すための、メミニという作曲者
正しいコードにするために、自分達はここまで来たのだ
「... それじゃあ...... メミニ、お願い」
メミニに、そう語りかける
冷静に、真摯に、向き合い、目的のための、願いを届けた
そんな自分に、心からの安堵がこもった笑顔を向けて、メミニは腕から影を浮かべだした
先ほどと同じように、影を形造り、色をつけ、マグヌム・バッハルが、最も嫌がるその楽器を、その腕から生み出していく




