第九十話 空からの光景
─クラウィールは、空中で体制を整え、周囲を見渡した
スペクラートは、風に飛ばされないように必死で抵抗している
声も出さずに、地面に捕まって、暴れ回る髪を気にも止めず、ただ淡々と、しがみついている
恐ろしいほどの無表情で、クラウィールを追うために
そして、義兄さまは......
逃げるように、目標に向けて走り出していた
追撃してくるイーデムの攻撃を全て避け、剣を構えて走っている
演奏と、それに準ずる行動を封じるため
割れる空気の隙間を縫い、避け、走り、動き続ける
終わらせる
マグヌムという、たった一人の、耳に刻み込まれる、美しく壮大な、オーケストラを...
そう、美しく響き渡る、誰もが魅了されるこのオーケストラを
「...... あれ?音が... 聞こえる...?」
マグヌムの演奏が聞こえたと認識した瞬間、クラウィールは自分の耳に手を当てる
そこにはすでに土はなく、周囲の音が全て、耳の穴へと入り込んでいた
だが、体の自由は効いている
何故だろうと疑問に思った時、周囲の風の音によって、オーケストラの全ての音が耳に入っていないのだと判断した
二つも同時に助けてくれた風、そして、それを預けてくれたアウロラに、心から感謝する
「... ありがとう、アウロラさん、こんなにたくさんしてくれて」
そして、降りる隙を探すため、空中から様子を伺いながら、演奏が途切れるその瞬間を見定めていた




