第七話 小勉強会
「どうかしましたか?義兄さま」
心当たりが無いといえば嘘になるが、義兄さまが二人で話したいと言う事などいままでなかったので、少し緊張している
「クラルス、あの楽器はどうやって手に入れたんだ?」
「楽器…って、あの飾られてたやつですか?」
「あぁ、大事そうに抱えていた弦楽器のことさ」
弦楽器
あのスタンドは義兄さまが用意したようだ
あれは、昨日の幻想局から受け取った物だが、話すなと言われていた
だが、義兄さまにだけなら少しだけ…
……幻想の世界についてと、協力関係になった事を除いて、アルカナカンパニュラとアルカナストリングス、幻想局という組織などの、把握しているほとんどを伝えた
「幻想局…アルカナ…
よし、僕が分かる事を伝えておくよ」
そう言うと、義兄さまはたどり着いた書斎の扉を開く
そして、二つ椅子を引き出し、向き合わせて片方に座る
自分はもう片方の椅子に座り、義兄さまと目を合わせた
「幻想局という組織は、残念ながら僕は把握していない
殺害は許せないが、まだまだ調査が必要だね
けど、鐘の音には少し覚えがあるんだ」
そうして、義兄さまによる小さなお勉強会が始まった
「鐘、というより『アルカナ』と名のついた楽器だね
『空中都市ルダス』で造られたその楽器は、特別な音を奏でると言われているんだ
死語の世界に連れていくだったり、心が壊れるだったり、悪いイメージの楽器が多い
そのようなアルカナと名のつく楽器のことを幻楽器と呼ぶんだ
幻の、想像上のような道具として、幻楽器と呼ばれているよ」
「はい!質問!」
手を上にあげ、義兄さまに質問する
「空中都市ルダスってなんですか?」
すると、義兄さまは呆気に取られたように凍りついてしまった
「……あぁ、そっか、都市の知識もまだだったね
ごめんごめん、説明するよ」
義兄さまはコホンと咳払いをして、新たな授業を始める
「このナルヴィー領は大きな都市の一部ということは知ってるよね?」
「はい、それは分かります」
本の挿絵で少し見ただけだが、都市は複数の地域に分かれていて、それぞれを貴族が管理していることは理解している
「そう、都市は多くの貴族が管理している
そして、都市そのものにも名前がついているんだ」
「都市の名前…ですか」
考えてみれば当然だ
都市に名前がなければ識別することは不可能で、同じ都市に住むという連帯感も生まれないだろう
「そうそう、ちなみに自分達の住む都市は『最優都市ストルゲ』という名前だよ」
ストルゲとルダスか……
「あ、もう一つ質問です
空中とか最優ってどういう意味ですか?」
「あぁ、都市の前につく単語は、簡潔に国の特徴を捉えているんだよ
最も優れた都市ストルゲ、空中にある都市ルダス、みたいに」
「へぇ~」
空中にある?
空を飛ぶ都市ということか?
一度は行ってみたいが、幻楽器を造っている場所らしいし、少し恐怖はある
「せっかくならもう少しルダスを話そう
ルダスは空に浮かぶ都市で、科学や魔術の研究が盛んな都市でね
そこでは、幻楽器の他にも様々な道具が製作されているという噂もあるんだ」
であれば、ルダスは未来都市ともいえそうだ
そういえば、マグヌムもルダス出身だと言っていたような…
「まぁ、僕が話せるのはこのくらいかな」
義兄さまは椅子から立ち上がり、腕を持ち上げ体を伸ばす
無視するつもりだったが、伸びたタイミングでチラリと見えた腹筋に、少々の憧れを含んでいるという前提で、見惚れてしまった
我ながら自分が恐ろしい
義理の兄に見惚れてしまうとは…