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第七十九話 家族への
(っ!動…いて…っ!)
ウィルスールの体が、ウィルスールの意思を無視して動き始めた
そして、鉄の剣を、隣のクラウィールに向け構える
クラウィールは、自ら頭を差し出すようにその場に膝をつく
何が起きるかは言うまでもない
理解し、その感情が暴れだした
頭の中全てを犯す、恐怖の感情
家族を殺す、家族に殺される
その年齢で味わってはならぬ、心の底から泣き叫ぶほどの、圧倒的な理不尽と恐怖
だが、それを、顔に出すことも、声をあげることも、何もできず
自身の肉体に伝わる、生々しい感覚を否定出来ぬまま、重い剣が頭蓋に狙いを定め、振りかぶる
(あ……あぁ……あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!
嫌だ……!義兄さん……!嫌だぁぁぁ!!!!!!)
(っ……………………あ、あぁ……)
その意思と反し、無慈悲な刃は、引かれるがまま落ちていく
ゆっくりと、だが、一瞬で、
管弦楽の目の前で、壮大な音楽と共に、それは落とされた
吹き上がるのは、赤い
手に伝わった、重い感覚
その瞬間、ウィルスールの頭は限界を迎え、動かなかった体と共に、その場で気絶した




