第七十七話 義弟との約束
「義兄さん、作戦です
あの中で一番厄介なのは、緑のマグヌムという男です」
マグヌムの体は、腕があらぬ方向へ曲がり、足も真っ直ぐではなくなっている
それに加え、顔や体からは、無理矢理動かした代償とも見てとれる破れた血管や、擦りむいた肌から血がダラダラと垂れている
恐らくすでに筋繊維もボロボロだろう
一体何が彼をそこまで駆り立てているのか、一切の理解が出来ないが、それ以上に頭を巡るのは、クラルスとの一つの約束であった
─「マグヌムという、緑色の髪をした青年がいます
そいつだけは、なんとしても殺さずに、自分に預けてください」
普段以上に真剣な表情をした義弟が、三人の義兄の前でそう言った
「……それは…どうしてだい?」
クラウィール義兄さんがそう尋ねるも、クラルスははっきりとした答えを出さず、ただただ必死で懇願してくる
「それは……まだはっきりは言えません
でも、あの人を救うためには自分がなんとかしないとダメなんです
……お願いします」
そんな、一切の迷いがない真っ直ぐな瞳
弟のそんな表情を見て、断る兄がいるはずもないだろう
グローリア義兄さんを除く、俺とクラウィール義兄さんはすぐに了承した
グローリア義兄さんは少しの間考えながらも、最終的には了承した
今考えても、クラルスはマグヌムになにをしようとしているのかは分からない
だが、義弟の約束だ
それだけは果たさなければならない
「俺が、後ろから回り込んでマグヌムの動きを止めます
だから、義兄さん達は三人を足止めしつつ、マグヌムに隙を作って欲しいんです」
そうは言ったが、無茶な頼みだ
だが、クラルスも劇場へ向かった今、出来るだけ早くこの三人を止めなければならない
「…分かったよ、義弟の頼みなら応えないとね」
「あぁ、やってみよう」
「…ありがとうございます」
二人は幻想局の様子を伺い、一人はマグヌムを注視する
六人の間に静かな緊張が走るが、それは瞬きの間に破られた
スペクラートが、持っていた指揮棒を胸の前に掲げた
「…っ!まずい!」
嫌な予感を感じとり、すぐさまグローリアがスペクラートに向かって駆け出す
だが、すでに"それ"は始まっていた




