第七十六話 五人目の協力者
「…っ!」
一瞬の隙を見抜いたスペクラートの持つ棒が、グローリアの胸に向かって、貫かんと動き出す
殺意の込められているはずの、恐ろしいと感じるはずの攻撃、確実に命を奪いに来ている
だが、その本人には一切そのつもりはない
スペクラートの持つ感情は、マグヌムと、イーデムを守りたい、それだけしかない
グローリアの胸へと迫る、鉄の塊
だが不思議なことに、それが迫っている間、グローリアはやけに冷静であった
避けるのは不可、防御も間に合わない
─だが、方法はある
グローリアは、棒が迫ってくる一瞬の内に、全力で魔力を流し始めた
五人目の協力者を動かすために、グローリアは全ての意識を腰の人形へ注ぎ、魔力を術式に流し込む
人形は、痙攣し、足を曲げ、必要な魔力が流れるその時を待つ
そして、魔力が必要量に達した時
すでに胸まで指三本ほどまで迫っていた棒に向かって、人形は勢いよく飛び上がった
間に挟まれた人形は体を広げ、その体に棒の攻撃を受けた
その人形は貫かれることなく、衝撃を受け止め、残りをグローリアの胸へと伝える
だが、衝撃を抑えたとはいえ、その攻撃が無力化された訳ではない
棒が当たった部位には、やはり今までにない衝撃が走り、確実に骨が折れたことがわかる巨大な軋轢音が、胸から外へと広がった
肺に穴が空いたような痛みと、内臓まで響く振動が同時に発生したことにより、一瞬だけでも呼吸が止まる
だが、それによってスペクラートは体勢を崩し、地面にへばりついた
そのおかげで追撃から逃れることが出来る
すぐに楽な呼吸法を見つけ出し、グローリアはウィルスールの元へと向かった
「っ、二人共、止まることはなさそうだね」
「義兄さん、受けるよりも避けることを意識してください!」
クラウィールが集まった所までは良いとしても、二人は依然として苦戦を強いられていた
乱雑ながらも、個々の攻撃が致命傷になりうる、マグヌムと幻楽器を扱うイーデム
対して、クラウィールとウィルスールは息の合った連携と情報共有で、少しの暇を共有しながら目の前の敵を止めるために戦っている
互いに大きな動きがないまま、そこへグローリアとスペクラートが参戦する
「ケホッ…大丈夫か?」
痛みがないとはいえ、確実に傷ついた体内からは、望んでいない息が排出される
それを悟りながらも、ウィルスールは二人に作戦を伝え始めた




