第七十三話 天井から地面へ
「クラルス、キャピオ、コワイ」
後ろから、震えたように聞こえる声が届いた
…そういえば、キャピオも落下しているのだった
だが、こんな風に落ちて、体が元の形を保っているとは思えない
…しかし、メミニが言っていた方を向くと、先ほどと全く同じ光景が目に入った
その先にいたキャピオは、先ほどと同じ姿勢、同じ体制でなにかを呟き続けている
前に森で見た光景、そして先ほどの光景、その二つと完全に合致した
ただひとつ違う所は、頭から赤い血を大量に流している所だけだった
少しも動くことなく、その体勢で静止を続ける
血を気にせず、壊れた楽器にも目もくれず、ただ淡々と、小さな言葉を呟き続けていた
「……ね……ね……ね」
どうするのが正解なのだろう
もし攻撃した場合、自分の首が握り潰される可能性がある
だが、ここから動かずにいると、元に戻ったキャピオにすぐさま捕らえられるだろう
ならば、逃げたほうがいい
それに自分の目的は、マグヌムの人格を増やしたであろう金管楽器だ
キャピオは放っておいても問題ないだろうし、ならば早めに行動しよう
それに、義兄さまたちも心配だ
「…メミニ、行こっか」
「ウン」
そうして、天井をつたって歩くが、外に出るためには上にある入口までたどり着かなくてはならないことに気がついた
だが、掴める突起も特にないので登ることは不可能だ
いったい、どうしようか…
…そうだ、メミニに運んでもらえないだろうか
メミニは影で変幻自在だ、ならば、ロープのような姿になったりして、自分がそれに掴まって登ることは出来ないだろうか
メミニには悪いが、どうしても他の方法が思い付かない
ハープは使う意味がなく、木刀や周りの瓦礫なども、用途が思い付かない
ということで、メミニに身振り手振りでなんとか伝える
少し理解するための時間を挟むと、メミニは影となり、入口へのロープに変化して、上から下までを繋いでくれた
メミニを掴み、自分の体を上へ上へと引っ張りあげていく
影を掴むという凄まじい違和感を覚えながらも、なんとか入口まで戻ってくることができた
入口に入った瞬間、地面が逆転したことで頭をぶつけることとなったが、問題はない
「ありがとう、メミニ」
感謝を伝えると、メミニが先ほどの姿へと戻り、早速二人で通路を歩き始めた




