第七十話 劇場へ
「……はぁはぁ、なんだ、何してるんだ?クラルスは」
初めに気がついたのはウィルスール義兄さまだった
マグヌムの突撃や拳を受けながらも、横目でクラルスや他の義兄弟の様子も確認している
そこで逃げるクラルスと、それを追うキャピオに気がつく
だが、劇場に向かって走っていくクラルスに困惑と不安を抱えながらも、目の前にいる暴れたマグヌムを押さえ込むのに精一杯だった
「ドケェ!!トメテミロォ!!」
「っ……!こいつ!」
突然飛んできたマグヌムの拳を、手に持った剣で受け止める
だが、いつ剣が割れてもおかしくない程の力が、掌から肩にかけて伝わってくる
この体型で、ボロボロになった体で、どうしてこれ程の力が出せるのか、甚だ疑問だ
クソッ、動きを止めるだけで精一杯だ
クラルスを助けに……いや、クラウィール義兄さんもグローリア義兄さんも、それぞれの相手を止めるだけしか出来そうにない
─クラルス……ごめん……こいつを無力化したら……絶対助けに行くから!
─はっ、はっ、はっ
疲労はない、痛みもない
そうだ、走り続けろ
劇場に再び入場すると同時に、後ろのキャピオに振り返る
そこには、淡々と、表情も無く、機械のような動きで、走り続ける、普段通りのキャピオがいる
速度は、自分と同程度だろう
なら、この中ならば振り切ることも出来るはずだ
通路を駆け抜け、舞台に向かう
舞台にはやはり楽器が並び、その隣には例外無く幻想種が立っていた
そこで、劇場の前で彼の名前を叫ぶ
必ず、助けになってくれると感じて
「メミニ…っ!」
…すると、舞台に立っていた一人の幻想種が、影となって動き出した
マグヌムからの命令よりも、クラルスからの声に答える、それは、普通であればあり得るはずもない光景だった
「クラルス、ダイジョウブ、?」
メミニは、自分とカミラを足したような外見で、隣に立って走り出す
「メミ……ニ……ィ」
すると、自分の声に反応するように、後ろから、唸り声のようなものが聞こえてきた
キャピオの声だ
……そこで、思い出した
あの時、森の中で起きた恐ろしいキャピオの動き
あの時と同じ、キャピオの行動が、再び始まろうとしていた




