第六十九話 役目
クラウィール義兄さまが、改めて口を開く
「それはそうと、先にあの人達を止めないとね
クラルス、何かわかるかい?」
「すみません、詳しいことは……でも、あの人達が幻想局で、止めればオーケストラは中止できるはずです!」
そう答えると、クラウィール義兄さまは「わかった」と一言呟き、戦っている二人に向けて叫んだ
「その二人だ!その二人を止めろ!止めれば、世界も救える!」
その声は、今までに聞いたことがないほどに、激しく、荒々しく、だが、それ以上に、人々を奮い立たせるような迫力があった
「クラルス、ここで少し待ってられるかい?」
自分が首を縦にふると、クラウィール義兄さまは優しい笑顔を自分に見せて、マグヌム達の方へと走っていった
…だが、ここで一つの疑問が浮かんだ
スペクラートは、どうしてここまで来たのか
追いかけてきたのであれば、もっと早く駆けつけるはずだ
つまり、自分の声に反応してすぐさま来たと考えられる
そうなった場合、ここにくるのが一人だけなはず、ないよね
「マグ…ヌム…さま?」
ホールの方向から近付いてくる二つの影、その手にはそれぞれ楽器が握られている
当たり前だ、むしろ遅すぎるまであるだろう
─イーデムと、キャピオが、参戦するのだ
今、三人の義兄さま達は、幻想局の二人に対して優位を取れているように見える
だが、三人対四人になった場合、優位を取り続けることが出来るかといわれれば、厳しいと言わざるを得ないだろう
自分も参戦すべきだろうか
……いや、自分の仕事は一緒に戦うことではない
足手まといになるくらいなら、幻想局の戦闘に参加する人数を減らすほうがい
つまり、今自分がするべき行動は─
「うああああぁぁぁぁ!!!」
大声を出し、劇場に向けて走り出した
義兄さまからの約束を破ることにはなってしまうが、今の自分に出来るのはこれしかない
「なっ…!
キャピオ!あいつを追いかけろ!」
イーデムが荒々しい声をあげ、隣にいたキャピオが体の向きを反対側へと動かした
そのまま、キャピオは自分を追いかけてくる
よかった、作戦成功だ
予想通り、人員を一人減らすことに成功しただろう
ただし、キャピオから逃げ切れなければ、自分の命の保証はない
そうだ、走れ、走れ、走れ!
ホールに行って、見つけるべきは金管楽器
自分の役目は、逃げ続けてそれを見つけることだ




