第六十八話 猛烈な拳
「クラルスゥゥ!!止めてミロぉぉ!!」
マグヌムが、義兄さま達に一切振り向くことなく、まっすぐに自分に向けて走ってくる
咄嗟に木刀を構え、マグヌムの拳が自分に触れるその隙間に、木刀を差し込んだ
だが、マグヌムの拳はその程度では止まらず、木刀に加わった衝撃は、すぐさまそれを破壊する
そして、その拳が自分の腹に直撃した
木刀によって威力が弱まったにも関わらず、その衝撃は体の内部まで響いたことを直感させられた
痛みがない、だが、衝撃が伝わる
そして、その場で立ち尽くしていると
「…ゲホッ、ゴボッ」
その場で、血を吐いた
今までに味わったことのない液体が、口の中を占領する
鉄と、えぐみの強い味
その時になってようやく、内臓に被害が出たことに気がついた
「…スっ!クラルス!!」
衝撃?それとも恐怖?どちらにせよ、血を吐いたことによって、少しの間意識が飛んでいたらしい
クラウィール義兄さまの顔が見える
どうやら、ウィルスール義兄さまとグローリア義兄さまは、マグヌムとスペクラートの動きを塞いでくれているようだ
「クラルス!…大丈夫!まだ生きてる!」
そう言うと、クラウィール義兄さまは腰の袋から一枚の紙を取り出した
ちらりと見えたそこには、桃色の法陣が描かれており、少し複雑に描かれているように見える
義兄さまはそれを自分の肌に密着させ、紙に魔力を流し始めた
法陣から桃色の淡い光が放たれると、だんだんと自分の体が変化していくことに気がついた
殴られた部分の痣が薄まり、明らかに異常だった体内が、少しづつ元に戻っていく
再生…しているのだろうか、自分の体が
そうして、紙から放たれた光が消え、法陣が消え去ったことを確認すると、自分の体はほとんどが再生しきっており、むしろ拳を受ける前よりも体が軽くなった気さえしてくる
「…これで、大丈夫そう、だね」
クラウィール義兄さまの息が切れている
かなり頑張ってくれたのだろう
だが、「これ、どうやって……」
「これは…グローリア義兄さまに…預かって貰ってたんだ…アウロラさんがくれたんだよ…絶対必要になるからってね…」
アウロラからの魔道具…
…あの人は、どこまで把握しているのだろう
まるで、自分の未来を観察されているかのようだ




