第六十六話 助け
走り続けていると、いつの間にかコンサートホールを抜け出していたことに気がついた
幻想的な空が、自分とマグヌムを見下ろしている
そして空の光を跳ね返し、地面の土は赤く染まっていた
土の地面を駆け、暴れ狂っているマグヌムから逃げ続けている
そんな、恐怖を抑えて走り続ける
助けて欲しい、そんな感情が巡る
だが、今助けてくれるのは、義兄さまだけだ
幻想局、すでに敵となり、今参戦したらもはや絶望的になる
義兄さまの姿は未だに見えない
だが、今この近くにいるかもしれない
見えないだけで、いる可能性もある
ならば、ここまで来たのなら、呼べば届くのではないか、助けてくれるのではないか
その考えが頭をよぎり、腹の底からその人物の名を叫んだ
「クラウィール義兄さまぁ!!!」
周囲に、声が響き渡った
マグヌムの咆哮と同等か、それ以上の大きな声
それが、男の耳に入った
その声を聞き、動き出す
助けるためか、守るためか、それとも…
武器を取り、走り出した
──「そろそろ約束の時間だね」
「幻想の世界…どんな光景が広がっているんでしょうかね?」
「本当に楽しみだよ」
三人が、屋敷の一室で言葉を交わしていた
クラウィール、ウィルスール、グローリア、三人が取り囲む机の上、そこには鐘が置いてある
一目見ただけでは、なんの変哲もないはずのただの鐘
末弟から託された、幻想の世界へと導くための幻楽器の一つ
効果の詳細を理解する暇もなく、世界を止める戦いに駆り出された三人は、実感が薄いままにクラルスという一人の家族を信じて、全力で戦う準備をしていた
クラウィール、そしてグローリアは、鉄の剣を腰にかけ、ウィルスールは木刀でありながらも、最高の力を出せるように一日を過ごした
刻一刻とせまる約束の時
短くなるにつれ、三人の鼓動は早まっていった




