第六十四話 最後の話し合い
─ついに、今日の夜には決戦だ
準備を整え、不安に包まれながら夜を待つ
義兄さま達には、幻想の世界に行くための鐘を渡してある
自分は幻想局からの鐘で幻想の世界に行くが、義兄さま達が一緒にいるとすぐに見つかってしまうだろう
そのため、義兄さま達には別の道から幻想の世界に入り、作戦を決行してもらうという訳だ
そうして、普段通りの…ただ、常に緊張しきった一日のほとんどが終わり、夜を迎える
背負ったハープや、腰にかけた木刀など、それらが自分の中の覚悟をさらに強固なものとする
…管弦楽までの時間が、少しずつ短くなっていく
自分が今、こうしている理由を思い浮かべる
世界の終わりを阻止するため
皆を、家族を守るため
そして
マグヌムを救うため
自分は戦うのだ
鐘の音が響く
目の前には、もうとっくに屋敷の姿はない
それどころか、小屋すらも
あるのは、更に奥に建つ、巨大なコンサートホールのみだ
迎えてくれたのはイーデムだった
案内された先に行き、三枚のチケットを渡す
中に入ると共に、すぐさま舞台裏へと走った
そこにいる、局長と、最初で最後の交渉をするために
「…マグヌム」
自分は、恨みをこめた眼差しで、マグヌムを見つめた
ただ、その眼に写ったマグヌムは、いつもと様子が違っていた
まるで、制御が効かなくなった機械のように、常に狂った状況を維持している
そんな中でも、マグヌムはこちらに気付くと、少しは正気に戻って話をした
「今回は!世界最高のオーケストラのために来てくださってありがとうございます!地面が消え、空気が壊れ、世界が滅びるその時まで、どうぞお楽しみください!」
「やめるつもりは…ないんですね」
もはや隠す気すらないマグヌムに、自分は果てなき怒りを感じた
「世界が滅びる、なんて、そんなことはさせない
たとえ力ずくでも、自分は管弦楽を止める」
「……は?」
自分がそう言った途端、マグヌムの狂気的な笑顔が消え、顔には怒りと安堵が共存しているようにみえた
その表情は、まるでピエロのようだった
「管弦楽を…止める?」
「……はい、絶対に止めます」
「ふふ…くふふ……あっははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!」
マグヌムが、笑った、狂気的に
本能的に忌避してしまうほどの、圧倒的なおぞましさを同時に持ちながら
自分は、初めて出会った時を思い出す
目の前の化物は、これまで何も変わっていない
これからも、変わることはないのだろう
ならぱ、ここで、こいつを、倒す
マグヌムから追い出すでもいい
こいつを捕縛するでもいい
ただ、この化物だけは、絶対に生かしていてはいけない




