第六十話 筋トレ後
オーウィ義姉さまの話によると、数ヵ月前、ルシオラ義兄さまはオーウィ義姉さまに女装を教えて欲しいと頼み込んだらしい
サボり癖のあるルシオラ義兄さまには珍しく、本気の懇願だったため、義姉さまは仕方なく了承した
それからというもの、定期的にこうして女装の練習をしているらしかった
基本的には空き部屋でやっているようだが、今日はセクシーさを追及する、とかでここで練習していたようだ
何故女装の練習をしたいのか聞いても答えてくれず、特に今回は何度も聞き続けてしまったせいで義兄さまが怒り、出ていった先で、自分たちと会ってしまったということらしい
「それならば、そうと言ってくれたらな」
「ダメですよ義兄さま、人には家族にでも秘密にしたいものがあるのですからね、
義兄さまだってそうでしょう?」
二人の義兄さまが話をしていると、ルシオラ義兄さまが元に戻った様子で戻ってきた
いつの間にか着替えており、服はいつもと同じような物を着ている
「あの…ルシオラ義兄さま……ごめんなさい……」
勝手に勘違いしたこと、隠したいことを見てしまったことを、心の底から謝罪する
二人の義兄さまも自分に続き、深々と頭を下げてルシオラ義兄さまに謝罪の意を伝えた
「……まぁ、いいですよ、これからも対応を変えないでくれたらぁ
クラルスも、こんなこと忘れて、前とおなじように仲良くしようねぇ」
そう言って、ルシオラ義兄さまからの許しを貰った所で、やっと浴場から解放された
…抜け出して気がついたが、自分達にこんな暇はなかった
出来るだけ早くウィルスール義兄さまを見つけなければ
「食堂にでも行ってみようか?」
「いえ、オーウィがあそこに居たなら、ウィルスールが食べるものが無いから、寝室に行くのがベストじゃないですかね」
「それでは、寝室に向かいましょうか」
先程のことはなかったかのように、三人は寝室に向けて歩き出した
記憶には強く残ったものの、そんなことはなかったものとして、そのまま歩みを進める
そうして寝室にたどり着いた
いつもの寝室だが、二人の義兄さまと一緒だと考えるとかなり緊張してしまう
グローリア義兄さまが扉を開くと、そこには寝転んでいる義兄がいた
ベッドの上ではなく、地面に敷かれたマットに寝転んでおり、体に服が張り付いている
筋トレでもしていたようで、耳をすませば激しくなった呼吸の音も聞こえる
「ウィルスール、大丈夫?」
クラウィール義兄さまが声をかけると、ウィルスール義兄さまは、頭が上に向くように体を転がした
そして首だけ動かしてこちらを見る
「すみません、体が動かないのでこの体勢でもいいですか!」
体が動かないほどに鍛えていたくせには、その声はかなりの大きさだった
自分だったら腹の痛みで声が出せるかも怪しいのに
「…筋トレで体が動かなくなったの?凄い面白いじゃん」
いつのまにか、ウィルスール義兄さまのすぐ隣に立っていたグローリア義兄さまが、真顔でそう言った
本当に面白いと思っているかどうかは置いておいて、ウィルスール義兄さまは頭を動かして言った
「久々に動けなくなるほどやったが、やっぱりこれくらいがちょうど良いですよ」
正直に言って、この人の感性は自分達と比べて少しずれているように思える
まぁ、外見の年齢と精神年齢がずれているであろう自分が言うのも、おかしいとは思うが




