第五十六話 自立する人形
「見つけた協力者が、この人なんだ」
そう言うと、義兄さまは人形を見せつけてきた
どこかで見覚えがある人形だったが、それよりも、義兄さまがこれを協力者と言ったことに腹がたった
「…時間が無いんです、ふざけないでください」
「ふざけてなんていないよ、大真面目だ」
そう言って、義兄さまは人形に何かを始めた
何かというのは、手を人形に当てているだけで、実際になにをしているのか一切不明だった
「……なにしてるんですか」
「ちょっと待ってよ…」
そうして、沈黙と共に流れた数秒後、人形から光が漏れ始めた
光った所を見てみると、そこには法陣が刻まれており、どこかで見覚えがあると思ったその人形は、アウロラが魔力を流す訓練に使ったあの人形だと気がついた
光がだんだんと激しくなってくると、人形は少しずつ動き始める
倒れていた状態から立ち上がり、自立する事も可能になっていた
「これ…って…」
魔力を流すことによって、法陣の効果が発動したのだろう
だが、前までは少し動かす程度だったのに、どれだけの間自力で訓練したのか、たとえ苦手な義兄さまであろうと、凄いというのは変わりようのない事実だ
「すごい…人形が、本当に自立してる!」
義兄さまはかなり集中しているようで、自分の声が届いている様子がない
だが、その後にもさらなる驚きが待っていた
自立した後もどこか振動していた人形は、ぎこちないながらも、右足を前に出すという動きを見せ、その次には左足を前に出した
交互にそれを繰り返し、義兄さまの手から離れた後も、前に向かって歩くことを続けた
「歩いてる……」
だが、十四歩目を出した途端、人形は後ろに倒れ込み、それと同時に義兄さまも、止めていた息を荒くした
「…ハァ、ハァ、ど、どう、かな?、これで、認めて、貰えた、?」
苦しそうになりながらも、義兄さまは自分に向かってそう言った
確かに、凄いことは認めるが、これが協力者というにはかなり無理がある
義兄さまは、いったい何のために自分にこれを見せたのだ?
「凄い…ですけど、協力者ってなんですか?」
「ん?これで相手を気を引いている間に奇襲が出来る、でしょ?」
確かに一理あるが、用途が限られる上に、使用にこれほどの制限(発動時間、魔力の継続)があるならば、奇襲としてもかなり厳しいのではないか?
ということを義兄さまに伝えたが、
「まぁまぁ、大丈夫だって」
と、はぐらかされてしまうばかりだった
その後、義兄さまに振り回されながらもなんとか食いついて、話を続けていた時だ
「や、何を話してるんだい?」
どこか、懐かしい声が聞こえてきた




