第五十話 頼みの綱
「クラルスさま!」
イーデムの大きな声が、自分の耳に響いた
「帰宅されるのでしたら、再度小屋の方へ戻らなければ」
「あぁ…はい…」
頭がいっぱいになりながらも、なんとか声を絞り出した
─落ち着け、落ち着いて対処方を見つけ出さないと
自分一人の力では止められるはずもない
であれば、頼るしかない
義父さまは…いや、あの人にそんな暇はない
ならば…クラウィール義兄さまと、ウィルスール義兄さま
不服だが…長男にも……
「それでは、また三日後に会いましょう」
イーデムにより、鐘の音が響き渡る
いつも通り、目の前には巨大な階段が現れる
そして、眠気に襲われる
今にも倒れ込みそうになりながら、自分は部屋へとたどり着く
また、明日
絶対に…止める
幻想……局……
「管弦楽」まであと三日
日が昇り、最も高くなった時、クラルスは目を覚ました
憂鬱と、それよりも大きな焦燥に包まれ、クラルスは服を着替える
やはり同部屋の二人はいないが、それよりもいつもと違う雰囲気を感じていた
なにか屋敷全体が焦っているような、そんな気がする
部屋を出ても特に変化は感じられなかったが、ホールに行った時にその違和感が実際の事だと分かった
使用人の多くが、厨房と子爵の部屋とを大急ぎで行き来していた
水の入った桶や、薬を持っていく者、普段の家事を倍の速度で行う者など様々だ
一体何が起きているのだろう
中庭に向かうと、ルシオラ義兄さまが、マーテル義姉さまとアルブと一緒に遊んでいるのが見えた
自分はすぐさまそこに向かい、一体何が起きておるのかをルシオラ義兄さまに確認しに行く
「おはようございます、ルシオラ義兄さま」
「クラルス、おはよぉ、これあげる」
パンを差し出されたので、ありがたく頂戴した
「義兄さま、屋敷が慌ただしいんですけど、なにかあったんですか?」
「あぁそっか、寝てたからしらないんだねぇ
なんか、義父さまも義母さまも病気らしくて、熱もあるらしいんだ
それに、使用人も体調不良が多いらしくて、みんなバタバタしてるんだぁ
それで、私達も手伝ってるんだよ
ちなみに私はマーテルとアルブの世話係ぃ」
と、いうことで、今日は協力の頼みをする余裕はなさそうだ
そうして、ルシオラ義兄さまに感謝を告げ、屋敷の中を見て回った




