第四十三話 自責の手紙
決して良い目覚めではない起床となった
早く目を覚ました訳でも、義兄弟が上に乗っている訳でもない
ただ、起きた瞬間から妙な胸騒ぎがする
いてもたってもいられなかった自分は、寝間着のまま部屋を飛び出し、朝早くから屋敷の掃除をしている使用人に声をかけた
「あの…おはようございます」
「あら、クラルス様おはようございます」
スビトの名札をつけた使用人は、いつもと変わらぬ様子だった
だが、その後自分は一瞬にして凍りついた
「そういえば、今朝郵便受けを覗いてみたのですが、クラルス様宛のお手紙が届いていましたよ」
その手紙を見た瞬間、心臓の鼓動が速くなる
手紙だ
だれから?
─それは知っている
仕事だ
─新たな仕事の依頼が……来た
自分は奪い去るようにその手紙を掴み、すぐさま内容に目を通した
『新たな仕事を依頼する
前回と同じ時間に同じ場所に来い
来なかった場合は、ナルヴィー領地を破壊する』
前回と同じだ
だが、行かなかった場合の代償が変更されている
…あの幻楽器のせいだろうか
自分が運んだ、あの幻楽器
あのハープと同程度の力を持つのであれば、領地を更地にすることなど容易いだろう
つまり、破壊するというのは嘘偽りのない事実だ
背中にのしかかる重みが増した
昨日までの生活などまるで嘘のように、今ではあの幻想局に糸で繋がれてしまっている
断れるはずもない
手汗で湿った手紙を握りしめ、自分は部屋に戻った
手紙を部屋に隠し、普段通りに一日を過ごす
─またあの犯罪に協力しなければならない
昨日までのことなどさっぱり忘れ、頭にはそれ以外の事を思考する隙間もなかった
犯罪に加担した
それを思い出すだけで、自分の心の傷はさらに深く抉れる
だが、嫌でもやるしかない
ここを、家族を、思い出を、守るために
そして、その時が来た




