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第四十話 屋台飯

街に関する本で読んだ内容を思い出していると、いつのまにか馬車の動きが止まっていた


周りを見渡すと、まさに自分が望んでいた街という活気で、そこら中から魚の焼ける香りや多くの客引きの声、そして笑顔で楽しむ人々が、この空間を埋め尽くしている

ここまで活気付いているのはいままでに見たことが無かった


活気に当てられ、マーテル義姉さまは走って近くの屋台に進む

後ろからパテルが必死に追いかけており、帰宅する頃にはパテルはもう虫の息になっていそうだ


他の義兄弟達も自由に歩き回り、自分は暇そうだったルシオラ義兄さまと過ごすことになった


「相変わらずすごい人気だねぇ、ここは」

「ルシオラ義兄さま、来たことあるんですか?」

「一回だけねぇ、あの時も今日と同じくらい賑わってたよ」

昔から変わらず人気な街、さすがノーット侯爵といった所だろうか


早速、街の探索を始めた

多くの屋台や建物が立ち並び、それは一直線にどこまでも続いているように見える


魚を売る店、工芸品を売る店、服を売る店など、百を越える店があり、どこに入ればいいのか迷う

通貨は、小遣いの他にアウロラがくれた分もあるため、ある程度は余裕がある

とはいえ、使わなければ意味はないのだが


「ねぇ、クラルス」

何故か後ろを歩く義兄さまが声をかけてきた

振り返ると、義兄さまは一つの屋台を指差しており、そこはどうやら屋台料理を提供している店だった

確かに朝食もほとんど取っていなかったので、最初に見るべきは料理の店だったのかもしれない


屋台ではどうやら、揚げた魚と一緒に、柑橘類や卵、野菜を混ぜたクリームをパンで挟んでおり、雑でありながらも確実に美味しいとわかる料理を提供しているようだった

値段もそこそこで人も空いていたので、早速注文して二人でそれを食べた


ピスキスパーニスと名付けられたそれを一口食べると、まず最初にクリームが舌を染め上げる

甘味や酸味に塩味と、少しの苦味が混ざりあい、豊かなコクを生み出しながらも、バランスの取れた味わい、潰された食材のクリーミーな食感、そして柑橘類によって引き立てられたフルーティーで奥深い風味が口いっぱいに広がる、これだけでも大抵の料理は美味しくなりそうだが、それだけで終わるはずもない


後から追いかけてきた魚は、ザクザクとした食感の衣に閉じ込められた旨味の塊のようで、濃厚で油の乗ったプリプリとした身は、まさに主役を張るに相応しい実力を持っている

そんなクリームと魚を包み込み、パンは二つの味を邪魔することなく綺麗に調和させている

口の中ではすでに、濃厚なクリームと油の乗った魚が完璧にマリアージュしていた

まるで運命の相手との結婚式のように


「……!」

義兄さまも自分と同じように、あまりの美味しさに言葉を失っている

無我夢中で食べ進め、気がつくとそれはもう無くなってしまっていた

「……っはぁ!美味しかったぁ!」

呼吸も忘れていたのか、義兄さまは息を深く吸い込んでそう言った

これほどレベルの高い料理はもうないだろうと思い、二つ目を頼みに行こうとしたのだが、お腹も膨れていたのに加え、先ほどとは違ってかなりの人が並びはじめていたので、諦めて別の観光を楽しむことにした

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