第三十一話 幻想種
「メミ…ニ………」
カミラは自分の後ろで目を瞑ったまま縮こまっている
自分も、唯一の武器である木刀に手を伸ばす
だが、そのとき相手に一切の敵意が無いことに気がついた
マグヌムの外見をしていながらも、どこか中身は空っぽな、魂が無いようにも見える目の前の生物に、自分は一つ可能性を思い出した
それは、イーデムが話していた種族である、幻想種だ
幻想の世界にしか存在しない生命体、自我が無いらしいので、空っぽなのは頷けるが…
どうしてここにいるのだろうか
「メミ…ニ………」
「……メミニ?」
後ろで怯えていたカミラが、恐る恐るその言葉を投げ返した
だが、目の前の生命体は何の反応も示さずに同じ言葉を呟き続けている
「あなたはいったい…」
「ク…ク…クラ…ルス」
自分が語りかけると、それは反応を示す
今までの単語と切り替え、変わりに自分の名を呟き続ける
今一度その声をよく聞くと、それはマグヌムから発せられる声と遜色無いことに気がついた
「え?クラルス…って……」
「うん…何で、自分の名前を…」
自分の言葉に反応するように、それは再び繰り返す言葉を変える
「マグヌム…マグ…ヌム……」
それは、やはり幻想局の主の名だ
何度も、何度も続ける
ただ、その言葉の響きには、喜悦や高揚が籠っていた
「その…名前は……」
「また変わった…けど、クラルスは知ってるの?」
「マグヌム、マグヌム、マグヌム………メミ…ニ……」
マグヌムの連呼が終わると、再びメミニの連呼が始まる
メミニ、何の意味があるのかは知らない、分からない
ただ、その言葉には深い悲しみが染み付いていた
「…どうするの?その…人?」
「分からない、ただ……」
放ってはおけない
自分の名前を知っているから、マグヌムの名前を語ったから、そんな些細な出来事でも、なぜか自分は無視できない、見過ごせない
義兄さまなら、クラウィール義兄さまならば、誰であろうと必ず助ける
自分も、そうありたい




