表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/55

第一話 ナルヴィー領武器商人殺害事件

さて、もうすぐ僕も七歳を迎えようとしているのだが、そんな時にとある事件が発生した


それは、ナルヴィー領に来ていた武器商人の、見るも無惨な殺人事件だ


詳しく話すと

とある日の日中、ナルヴィー子爵に武器を買わないか?と取引に来た男がいた


元々ナルヴィー子爵は戦に興味は無く、特に戦力が必要な立場でもない領地であったため、商人を一蹴してすぐに追い返した

のだが、どうもその商人は盗みを働いて得た武器を売り付けようとしていたらしく、子爵の優しさに漬け込んで罪を擦り付けようとしていたらしいのだ


それだけでもはた迷惑な話なのだが、話はそれだけで終わらなかった


子爵に追い返された男は、どうしてもナルヴィー子爵に買って貰いたかったのか、ナルヴィー領近くの森に向かい薪を燃やして野営をしていたらしい


誰に気づかれるわけでもなく、獣と共に草の上で眠りこけていたようだった


そして、次の朝早くに目を覚ました木こりが森に向かった時に、売り物の武器で無惨に殺された男を見つけたという話のようだ


たった一日で、ナルヴィー子爵が殺したんじゃないか?などという根も葉もない噂がナルヴィー領だけでなく、隣のミセル子爵の領にまで届いていたらしい


当たり前だがそんなことは全くなく、むしろ子爵自身ですら真相を知りたがっている

 

当然、自分も興味がある

義父さんに迷惑をかけた男の真相を知りたいという気持ちも確かにあるが、自分が気になっているのはやはり、この男は何故殺されたのか

という疑問であった

 

男は盗みを働いたうえ、それを貴族に押し付けようとした人物だ、罰を与えられても文句はいえない


だが、それが人を殺していい理由にはならない

殺すことは、悪だ

 

加害者はどうして殺したのか、悪を理解して殺したのか、被害者の思いを考えていたのか

疑問はつきない


疑問を疑問のまま解決しない人も多い

結局は忘れてしまう、一時的な興味にすぎないからだ


だが、自分はどうしても気になってしまう


─殺すという行為は、自分はどうしても許すことができないのだ

 

なので、自分は調べてみることにした


危険なのは百も承知だ

だが、こう見えても剣術は出来るため、身を守る事くらいは出来る

それに、まだ六歳の子供を殺す程野蛮な相手でもないだろう(確証はないが)


そうして自分は、今日の夜に屋敷を抜け出す事に決めた


ナルヴィー子爵の屋敷は大きいが、民との距離を近づけるという理由で塀や壁は存在しない


それに屋敷のすぐ隣には森があり、武器商人の男が殺された場所にも繋がっている


そのため、怒られるという点を除けば簡単に外に出られるようになっている


正直守りが甘すぎる気がしないでもないが、ナルヴィー子爵に恨みを持つものはいないだろうし、領地も平凡なため、守る意味がないと言えばそうかもしれない


こうして、屋敷の皆が寝静まる時間を迎えた


自分の部屋には他に二人の義兄がいるが、二人共眠りが深いタイプのため部屋から抜けるのはとても簡単だった


次の問題は、夜の見回りをしている二人の使用人だ


いつ寝ているのかわからないこの二人は、屋敷中を徘徊しており、見つかった瞬間説教部屋へと直行だ


夜遅くに出歩く六歳児など、怪しいにも程がある


警戒を怠らず、慎重に寝室の扉を開き、二人がいないことを確認する

これまた慎重に扉を閉め、屋敷の西側にある出口に向かった


残念ながら自分の寝室は屋敷の東側にあるため少々時間がかかってしまうのだが、物陰に隠れて少しづつ着実に進んでいく


さながらスパイのような身のこなしで屋敷の廊下を進み続ける


途中に飾られてある絵画も、まるで自分を見ているかのような錯覚を起こしてしまう

窓から突き抜ける月明かりが自分の影を作るのも、自分の中にある小さな罪悪感を増幅させるには充分だった

 

階段や廊下の先を警戒しながらゆっくりと出口を目指していると、玄関ホールのあたりで足音が聞こえてきた

間違いなく見回りだ

 

自分は今、二階の中央階段の横にしゃがんで下の様子を眺めている


覗き込むと、二人の見回りが蝋燭片手に会話しているのが見てとれた

「……ん……手洗……行っ……る」

「了解……くな……い……にね」


詳しい内容はあまり聞き取れなかったが、この言い回しはトイレにでも行くのだろう


一人の見回りが向かった方角も、トイレのある場所だ


それに、運がいいことにもう一人の見回りは自分がもときた方向へ向かった

これで安心して出口に向かえる


と、特に何事も起きずに出口までたどり着くことができた


出口の扉は自分の体にとっては大きく、少し手間取ってしまったが、なんとか外に出ることができた


案外呆気なかったなと胸を撫で下ろし、早速森へと向かった、その時

 

「ワン!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ