第二十七話 五番目
相変わらず鬼ごっこをしているアルブとマーテルに向かうと、怖がっているアルブが自分に向かって走ってきた
「アルブ、お手」
アルブの高さまで頭を落とし、アルブに向けて手を伸ばす
すると、アルブは右前足を自分の手に乗せてワンと吠えた
「よし、おかわり」
アルブは右前足を降ろし、左前足を手に乗せる
「よしよし、賢いぞ!」
しっかりとこなしたアルブを、自分の両手で撫でまわす
心地よいのか、アルブはさらに自分に近づいてくる
「おとーと、ずるい!」
その様子を見ていたマーテル義姉さまが、走りながらアルブのお尻に抱きついた
アルブはその瞬間、すぐに警戒心を高めてヴゥゥと威嚇を始める
「ダメですよ義姉さま、アルブが嫌がっています」
「え?そうなの?」
自分が注意すると、義姉さまはシュンと小さくなってしまった
「義姉さま、アルブと仲良くなる方法が一つありますよ?」
「ほんとに!?」
義姉さまは一瞬にして笑顔を取り戻し、自分の話を聞くために耳を立てた
「はい、まずは……」
そうして義姉さまにはボールを渡し、アルブと一緒に遊ぶ、そして義姉さまにはアルブの手並みに沿って優しく撫でさせた
アルブは賢いのですぐに義姉さまに懐き、一時間も経つ頃には二人で一緒に駆け回っていた
「まてまてー!」
「ワン!」
光景を微笑ましく眺めているが、実際には自分と年齢がほとんど変わらない、それどころか年上だ
周りから見たら相当おかしな光景だろうが、この屋敷にいる者は自分を理解しているので問題はない
さて、そろそろ空腹も限界だ
相変わらず朝から何も食べていないので、そろそろお腹を満たしたい
だが義姉さまを放っておく訳にもいかないので、終わるまでは待つことにする
すると
「おーい、クラルスー」
後ろの屋敷の上から声が聞こえた
この特徴的な中性の声は、上から五番目の義兄弟、ルシオラ義兄?さまだろう
振り返り上の窓から覗いていたその顔は、やはり男性とも女性とも取れる中性的な顔立ちだった
自分とウィルスール義兄さまと一緒の部屋で寝ているので恐らく男性だが、実際に男性なのかは子爵以外誰も知らない
ルシオラ義兄さまは窓から体を乗り出すと、勢いよく中庭に向かって飛び出した
かなりの高さから落下したにもかかわらず、着地した義兄さまはすぐに立ち直り、右手に持っていたパンを自分に差し出した
「今日も朝昼寝てたよねぇ、これあげる」
「あ、ありがとうございます」
ありがたく受け取ったが、少し意外だった
義兄さまは、マーテル義姉さまに続いて破天荒な人物で、いつもの訓練などもよくすっぽかしている
そのせいで子爵からの説教が絶えないらしいのだが、本人はこの通りピンピンしている
そんなイメージがあったので、義兄さまがこんなことをしてくれることが意外だった
「へぇ、マーテルのお世話してるんだ、偉いねぇ」
貰ったパンを食べていると、ルシオラ義兄さまと雑談を交わしていた
「でもクラルスってマーテルより年下だよね?」
「そうですよ?」
「弟が姉の面倒を見るって、なんだか面白いね」
やはりそこか、と思った
慣れていたとしても、この光景は異様なのか
そうして、しばらくの間ルシオラ義兄さまとの会話を楽しみながら、マーテル義姉さまとアルブを見守った




