第二十六話 ハプニング
マーテル義姉さまを連れて、さっそく中庭に来た訳だが、どうやらすこし困ったことになってしまったようだ
マーテル義姉さまがアルブを見つけた瞬間走っていったのはまだいい
だが、怯えたアルブがマーテル義姉さまから逃げて、5m程の木の上に登ったことには驚いた
それを追いかけるように義姉さまも木に登ったのだが、義姉さまはすぐに降りられないことに気がついた
そして今、義姉さまが瞳が雲で覆われた所だ
助けたいのはやまやまだが、自分の身長では5mの高さにいる義姉さまに届くはずもなく、かといって助けを呼びに行くと義姉さまはすぐに泣き出してしまうだろう
いったいどうすればいいのか…
「おとーとぉ…助けてぇ…」
涙目で訴えてくる義姉さまに、自分の意識せぬ間に体が木に登り始めていた
体に遅れて頭もすぐに理解する、目の前の義姉一人助けられなくて、どうやって世界を救うのか
少し登り、怯える義姉さまに手を伸ばす
「義姉さま……っ」
義姉さまも自分に手を伸ばし、その手をしっかりと握りしめる
「少し我慢してください…」
「う…うん…!」
更に上に登り、義姉さまの体を自分に寄せる
そして足と片腕で木にしがみつき、もう片腕で義姉さまを抱える
「降りますね」
ゆっくり丁寧に木を降りていき、少しずつ体を地面に近づかせる
だがその時、義姉さまを抱えていたせいでバランスを崩したのか、ただただ自分の力が足りなかったのか、腕が木から剥がれ落ちた
地面に向かって頭が落ちていくが、足だけでは支えられずに落下していく
このまま落ちてしまえば、義姉さまに大きな衝撃が走ってしまう
だが、この高さでどうにかできるはずもなく、そのまま地面に向かっていったのだが…
─背中に衝撃が走る、だが痛みではない
誰かに抱え込まれた、優しく柔らかい衝撃だった
「大丈夫?」
その声、その顔、間違いない
クラウィール義兄さまだ
「義兄さま…!ありがとうございます…!」
「あ!にいさま!」
両手で二人を抱えてくれた義兄さまは、優しい笑顔で語りかける
「クラルス、勇気を出してよく頑張ったね」
「マーテル、元気なのはいいけど気をつけてね」
優しい義兄さまはそのまま二人を地面に降ろし、マーテル義姉はアルブを追いかけにすぐに走っていった
「そうか、今日はパテルが風邪をひいていたから…
それなら、マーテルは任せたよ」
クラウィール義兄さまはそう言うと、すぐに屋敷に向かって足を進める
「義兄さま…は、この後用事ですか?」
義兄さまのほうが面倒見が良いし、任せられるのならば任せたかった、だが
「そうだね、父上と一緒にミセル子爵の所へ行かなくちゃいけないんだ」
隣の領地のミセル子爵、良くも悪くも貴族らしい人物だと聞いたことがある
確かに貴族同士の関わりは無視できないだろう
「そうですか…すみませんお止めしてしまって…」
「大丈夫だよ、また今度話そうね」
「…はい!」
義兄さまが屋敷に帰るのを見届ける
そして今日一日は、義兄さまから任されたマーテルの世話をすると心に決めた




