表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/156

第二十四話 秘密

クラルスがルダスにいた頃、マグヌムはたった一人でホールの中央に立っていた


ホールの中には誰も、たった一つの楽器すらも、存在していなかった

あるのは、たった一つの影のみ


これはマグヌムの日課の一つであるのだが、実際にこの光景を見た事がある者は存在しない


マグヌムはその場に縮みこむと、抑え込んでいた意識を解放した


「あ……あぁ……!」

「はぁ…そろそろ諦めたらどうだい?」

「ふざけ……るな…っ!」

 

その場には一人しかいないはずだった

だが、そこで会話しているのは間違いなく二人だ


人格が変わったように口に出しながら、頭の中で二人の人物が会話をしている


「止めようとしたって無駄だよ、だってあの三人がいるんだから」

「うるさい……黙れ…!」

「うるさいのはそっちだろう?さっさと死んでしまえばいいものを」

「っ……!!」


マグヌムの腕が、マグヌムの首を締め付ける

だが、そんなことを意に介さず、二人は会話を続けた


「残念、君の暴力は僕の力だ、僕がそんなことをしたところで、この体には一切影響はないよ」

「おまえは…僕ではない…!」

「ならば、君も僕ではない」

「…」


マグヌムの腕から力が抜け、ぐったりと地面に落ちてしまった


「これで分かったかい?君は、マグヌムではない」

「違う、」

「マグヌムは僕だ」

「違う、違う、」

「君は、ただの脱け殻だ」


「ちが…う……」


顔の半分は満面の笑み、もう半分は絶望の涙、ピエロのようなその表情は、マグヌムという人物の葛藤そのもののようであった


二つの人格、目も見えぬ、耳も聴こえぬ、

そんなマグヌムの苦しみが、理解できる者はこの世界にいるのだろうか


マグヌムは、祈るしかない


この状況を打開する、その手助けをしてくれる人物が、目の前に手を差しのべてくれることを


「メミ…ニ……」



「……行ったか」

意識が沈みこんだことを確認し、マグヌムは立ち上がった


そして、ホールの出口に向かおうとした瞬間、後ろから向けられる視線に気がついた


「…だれだ」

だが、そこにはだれもいない

あるのは影のみ

それ以外はなにもない


首を傾げながらも、再び出口に向かうマグヌム



マグヌムの姿が消えた後、影はその場で蠢いた

影が盛り上がり、やがて一般的な人の身長まで伸びる

その後は姿を変え、色を変えた


その外見は、マグヌム本人と遜色ないほどに精巧に、その身をつくりかえていた


幻想種の一人


自我がないはずの種族が、何故マグヌムの姿を模したのか、何故自立して動けるのか


それを知ることが出来るのは、たった一人のみ

クラルス・ナルヴィーだけであった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ