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第二十三話 盗み

「ただいま」


後ろから声が聞こえた、階段の方向だ

誰が帰宅したのか、声を聞く前から分かっていた


マグヌムだ


マグヌムが今、階段にいる


自分は今、鐘を持っている

これは、どこをどう見ても怪しいだろう


バレてはいけない、その焦りのせいだろうか、飾られていた鐘をカバンに詰めた所まではよかった


だが、台座の鐘に乗せていた手が震え、鐘は地面に向かって落下しはじめた


これはまずい

もし音が奏でられた場合、楽器の力が失われていることがすぐにわかってしまう

落とした時の雑音も力の発動条件を満たすのであれば、それは確実に起きる


それをマグヌムが見た瞬間、自分のしたことがすぐに見破られ、ここに来る手段も無くなってしまうだろう


それだけは阻止しなければならない

このまま世界の破壊を見ているだけだというのは、できない


そして、その時はきた


地面に落下した鐘は、ゴンという衝撃音を鳴らすだけで、その後は一切の音を奏でることなく地面に留まった


ホッと胸を撫で下ろしたが、すぐに新たな恐れが目の前に生まれた


落下した時の衝撃音、これは鐘本体の音だろう

だが、中にある分銅の音が一切しないというのはありえるのだろうか?


そのまま盗みが発覚すると覚悟を決め、後ろにいるマグヌムの方向へ体を向けた

そして今にも頭を地面につける覚悟でマグヌムの顔を見た


だが、マグヌムは怒りや困惑の表情をするどころか、何も起きていないかのように静かな表情をしていた


「え?」

その後、階段を降りて自分を見つけたマグヌムは、すぐに地面に落ちている鐘に気がついた


「あの…それは…」

自分の声などまるで届いていないかのように、マグヌムは鐘を拾い上げ、元の台座に戻した

 

その後、マグヌムは壁に置かれていた指揮棒らしき物を掴み、腰につけたケースに放りいれる


すると、マグヌムは驚くほどの笑顔を取り戻し、まるであの時の化物のような雰囲気を醸し出していた


「久しぶりだね、といってももう帰る直前だと思うけど」

馴れ馴れしく話しかけてくるマグヌムに嫌気を感じながら、困惑しながらもどうしても聞きたかった質問を投げ掛ける


「─マグヌムさん、一つ質問です


…どうして幻想局を作ったんですか?」


「幻想局を作った理由かい?

それはね…………………………

世界最高の管弦楽を起こすためさ!」

少しの間を空けながらも、マグヌムはそう答えた


誰が聞いても怪しいが、それは最後ということを隠したかったためだろうか

 

そう思い、求めていた回答から外れた回答に肩を落として、すぐに自分は幻想の世界から帰ることに決めた


「…そうですか、ありがとうございます

あと、自分もう帰りますね」

「そうかい?少し寂しいけど、仕事はしてくれたようだしね」

楽器の入った箱を眺め、マグヌムはそう言った

そして腰から鐘を取り出す


「次の仕事も、手紙を届けるからね」

そしてマグヌムは鐘を奏でた



気がつくと、目の前には大きな階段

帰ってきたことをしっかり確認したと同時に、カバンの中身を確認する


そこには持ってきていた道具と共に、入れ換えた鐘が入っている

「よし、これで……」

 

最高で最後の管弦楽、阻止するための前奏曲が今、幕を降ろした

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