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第十六話 仕事開始

キャピオは立ち上がり、すぐに階段へと歩きだす


質問すらさせてもらえずに、早歩きのキャピオに頑張って追い付く


どうせ断ったらカミラが人質に取られるのだろう、ならば最初から従っていたほうが合理的だ


「あの…キャピオさん?」

「………」

話しかけても、まるで耳が聞こえないかのように無視され続ける


このまま三時間歩き続けるなんて辛いだけだ

どうにかして話を聞き出さねば


「三時間もかかるのに、なんで歩いていくんですか?」

「………」


「この世界の空ってすごい色ですよね」

「………」


「キャピオさんはなんの楽器を使うんですか?」

「………」


まったく話が繋がらない

全て一方的に無視される


耳が聞こえていないのか?いや、そんなはずはない

単純に自分と話すのが嫌なのだろうか


だが、三時間もこのままただただ歩き続けるのは相手にとっても辛いだろう


そして、他にも様々な話題を提示していったが、全てにおいて反応がなかった

自分が思いつく限り全てを出し尽くし、残る話題は一つのみ


これが届かなければ諦めて三時間歩くしかない

 

「キャピオさんも、ルダス出身なんですか?」

「……!」


その瞬間、キャピオさんの顔色が変わり、機械的だった顔が人間味のある柔軟な表情になった

その顔には怒りが込められており、同時にキャピオは足の動きを止めた

 

「…キャピオさん?」

静かに尋ねるも、やはり返事はない


すると、キャピオは自分に向けて腕を伸ばしてきた


指は鉤爪のように曲線を描き、喉元に向けてゆっくりと伸ばしてくる


自分は、その様子を見て危険だと察知し、腕が届く直前という状況で後ろに下がる

それと同時に木刀を取り出し、キャピオに向けて構える


「………ね」

…声が聞こえた、静かな音が、耳に届いた

微かな、小さな小さな声が、キャピオの口から放たれている


「……ね……ね……ね」

その声は、一定の周期で一切音量を変えることなく、機械のように淡々と連呼していた


その光景に恐怖を感じたはずだ


確かに自分は恐怖を感じたはず

 

だが、脈拍が早くなることも、怯えからくる汗が出ることない


ただただ冷静に、その光景を見ながら木刀を握り締めていた


その状況が何分続いただろうか、腕を伸ばした体制のままキャピオは言葉を吐き続け、自分もその光景を見続けていた


何故逃げなかったのか、もしこんな場所で遭難でもしてみようものなら、救助が来るはずもない


どこにいるかわからない以上、目の前のキャピオが唯一の帰り道だったからだ


キャピオはやっと言葉を止めると、はっとした表情ですぐに体制を整えた

木刀を持った自分に目もくれず、先程向かっていたであろう方向に体を向けた


それはやはり機械的で、血の通っている人間性とは到底思えない動きだった


「すみませんでした、向かいましょう」

キャピオはそれだけを伝えると、すぐに早足で歩き出す

訝しみながらも自分はその後を追った


まるで何事もなかったかのようにまた二人で歩き始めたが、今のはなんだったのか何一つ分からない状況で、改めて一時間歩くという苦痛を思い出しながら、重い足を動かした


長く歩いてきたが、そろそろ一時間くらい経っただろうか?そろそろ足もかなり痛みを帯びてくる


隣のキャピオも心なしか足取りが重くなったように見えた


当たり前だがそんなはずはなく、涼しげな顔で今までの速度を維持しているのだが


それから数分歩き続けると、キャピオが急に立ち止まった

また首を狙うのかと、さっきの記憶がよみがえり木刀に手をかける


だか、その心配は杞憂に終わった


キャピオは、腰にかけていた小さなカバンからヴィブラスラップを取り出した


だが、ヴィブラスラップの大きさはカバンの大きさを越えていた

実際にはどこからどうやって取り出したのか、気にはなるが答えてくれる相手ではないので仕方ない


するとキャピオが振り返り、自分を見つめて言う

「お待たせしました、ここならば演奏可能です」


自分が首をかしげる隙に、キャピオはヴィブラスラップを力強く叩いた

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