第十五話 再訪問
いつも通りの日常を過ごし、三日ごとにカミラと会う
そんな生活を一月近く過ごしたある日、ティエスから一通の手紙を受け取った
どうやら自分宛で郵便受けに入っていたらしい
もうほとんど幻想局の事も忘れていた自分にとって、その内容はあまりにも酷なものだった
『今日の夜、月が最も高い時間に外に出よ
鐘の音が仕事の合図だ
もし来なかった場合、最も親しい友人を殺害する』
心臓の鼓動が速くなる
自分の心臓の音、呼吸の音、とても強く聞こえる
嫌だと否定してもやらなければならない
最も親しい友人、それは十中八九、カミラの事を指しているのだろう
殺す…死ぬ…カミラが、自分が断ったら
嫌だ、カミラだけは殺させない
これ以上、幻想局に殺させてたまるか
やつらを潰すという方法もあるが、今の自分はあのハープしか持っていない
確実に対策されている
つまり従うしかない、ということだ
受け取ったのが昼間で助かった
まだまだ準備をする時間はある
自分は部屋に戻り、木刀などの整理をする
念のため護身用の武器は持っていったほうが良いという自分なりの判断だ
それにしても、何故幻想局はどうやってカミラの事を知ったのだろう
もしかしたら友人がアルブである可能性もあるが、あの組織がルプスに対して友人という言葉を使うとは思えない
ならば何故?
そういえば、マグヌムは楽器で監視をしていると言っていたような気がする
それが本当だとすれば、あのハープはどこかに監視装置でもついていたのか?
あのルダスから生まれた楽器だ、何がついていても驚かないが、なんと趣味の悪い
だが見つかったものは仕方ない、そのまま夜まで準備を整え、とうとう約束の時間を迎えた
ドアノブを掴み扉を開く
外は闇に包まれており、一切の距離を測ることができなかった
一度、アルブを連れていこうかと考えたが、危険すぎると判断して置いていくことにした
いると安心できるだろうが、仕事の内容すらも聞かされていないので足手纏いを作ることになるかもしれない
森の入口あたりで待っていると、あの時の美しい鐘の音が耳に響く
振り返ると、前回と同じ小屋が目の前に広がっていた
小屋の前には、キャピオと呼ばれた弱々しい雰囲気の男が立っていた
「…こちらに」
キャピオは一言呟くと、小屋に向けて歩きだした
自分もそれに続いて歩く
現在の持ち物はハープ、木刀、オーウィ義姉さまのお菓子、幻楽器が描かれた本、何の変哲もない鐘、カバンに入っていたロープ、それらを入れたショルダーバッグ
鐘は、幻楽器は見た目自体に特徴がある訳ではないので、騙せないかと思い、幻楽器が描かれた本は、なにかのヒントにならないかと思い持ってきた
キャピオが小屋の扉を開くと、突然二つの巨大な怒声が聞こえてきた
「さっさと帰れ!」
「チッ!また来るかんな!」
その時、見たことも無い女が小屋から飛び出してどこかへ走り去っていく
その女性の耳には、巨大な真珠が飾られていた
目玉ほどの大きさの耳飾りが空の色を映し、まるでその真珠そのものに世界があるかのようだった
すると小屋から、追いかけるように青い巻き髪の男が出てきた
「クソッ、面倒くさい」
そう言うと、その男はキャピオと自分が来ていることに気がついたようだった
「あぁ、お見苦しい所を見せてしまいましたね
こんばんは、本日は私イーデムがご案内いたします」
キャピオとイーデムは小屋の中に戻り、それに続いて自分も小屋に入る
相変わらずの汚い倉庫だ
階段を下がると、前とは違う光景が広がった
埋め尽くしていた者達は一人すらも残っておらず、マグヌムともう一人の姿も見えない
キャピオとイーデムは置いてあった椅子に腰を下ろし、自分も同じように椅子に座った
「まずは、かなりの時間がかかったことを謝罪いたします、何しろ色々と立て込んでおりまして、申し訳ございません」
イーデムが丁寧にそう言うが、その声には少しの怒りが混ざっていた
先ほどの女が原因だろうか、心の底から怒っている様子だった
ただ、自分に対する怒りでないことだけは分かる
「今回の仕事の内容をお話しいたします」
今度はキャピオが口を開き、淡々と話を続ける
こちらは一切の感情を感じられず、まるで機械と話しているようだ
「まず、一時間歩いて目的地まで移動します
そこから少しの間飛行します
そして、置いてある楽器を回収します
それをここまで運んで終了です」
こんなに冷静に話して良い内容ではない
一時間歩き、飛んで、楽器を持ってまた帰ってくる
そんなに体力がもつだろうか?まだまだ自分の体は七歳の子供だというのに
「では早速向かいましょう」




