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第十二話 暴走

「クラルス!」


遠くから声が聞こえる


いや、先程よりは近くから聞こえる

こちらに走ってきているのだろう


だが、カミラにはどうにも出来ないだろう

諦めたくはないが、もう諦めるしかない


ごめん、楽器を聞かせてあげられなくて

自分の、初めて話したナルヴィー家以外の人物、カミラ


もっと…もっと、話していたかった





そうして死の瞬間を待っていると、ふと気がついた


この歪み、自分に向かってきていないんじゃないか?


カミラの顔が見えるほどの距離まで近づいてきた時、自分の体には一切傷は生まれていなかった


これは、この歪みが自身を囲んでいるだけで、自分には一切影響を与えないという確実な証拠だ


それを理解して、目から溢れた水が少しずつ引いていった

安心はしないが、不安は消え去った

 

「大丈夫!?」

カミラが必死で走ってくる所を見て、自分は焦った

これにカミラが巻き込まれたら、どうなってしまうのか、もしかしたら本当に死んでしまうかもしれない


「カミラ、近づいたらダメ!」

必死でカミラが近づくのを止めた


声に気付き足を止めたのは良いものの、このままではどうすることも出来ない

カミラだけは帰らせても、自分は衰弱してしまうだけだ


どうするか…



すると、一つの事を思い出した


アルカナカンパニュラという鐘の音を聞いて、自分は幻想の世界に行った

帰る時も同じ音だった


であれば、今回も同じように音を奏でれば良いのではないか?



自分は、改めてハープを構える


そして左手で弦を押さえ、右手で弦を弾く

 


ハープは、再度美しい音を響かせ、空間に広がってゆく



─すると、歪み暴れていた地面や風が、ゆっくりと静かになっていった


隆起や草も落ち着き、周囲の歪みの一切が途切れる

平原は剥げるだけ、という程度に治まった

このくらいであれば数ヶ月もすれば元に戻るだろう


やっと心の底から安心できる状況になった


目の前に迫っていた死という現象が無くなり、腰が抜けて地面にへばりつく


同時に、ハープに入れていた力が抜けてハープは楽器とは思えぬほど乱雑な音を奏でて地面に落ちた


すると、いつのまにかカミラが目の前に立っており、心配と感動とが複雑に混じりあった表情で自分を眺めていた


自分は申し訳ない気持ちとともに、目に見える怪我も無いカミラを見て更に深く安堵した


「ねぇ、今のなんだったの?」

カミラはどちらともとれる声色で話しかけてきたが、正直自分に答えられる事は何もない


なので、これからも演奏は続けようと思う


危険ではあるが、自分に危害がないのであれば確かに身を守る術としてこれ以上の物はない


「分からない

でも、もっと続けたら分かると思う」

 

そうして、自分はカミラと一緒にこのハープの力を試していった

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