表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/156

第十話 出会い

次の日


いつも通り書庫へ向かい、昨日のルダスの本を漁り、いつも通り訓練を受け、朝食を終わらせる

今日はやりたいことがあるのだ


そう、アルカナストリングスの実験だ


マグヌムは、監視の他にも『武器になる』と言っていた

その力はどのような力なのか、今日はその実験だ


といっても、今は森に行くのが少し怖い

一昨日の事が少しトラウマになっている


なので今回は、領から少し離れた平原に来ている


歩いて一時間半近くかかるが、誰の迷惑にもならない場所はここくらいしかない


屋敷の使用人たちの目を盗み、誰にもバレないよう動いた、どうせ自分は普段書庫に籠っているのでバレるはずもない

 

一面に広がる平らな土地のど真ん中で、自分は深く息を吸う


新鮮で冷たい空気が、体の中を駆け巡る

普段は絶対味わうことのない空気の味に、どこか感動すら覚える


心地よい、まるで自分が自然と同化しているかのような感覚だ


時間に制限はない、もう少しくらいこの感覚を味わっていてもいいだろう


自分は、柔らかい草の上に倒れ込み、青と白が描かれた天を眺める


いっそ昼寝でもしてみようか

 


─そんな事を考えていると、視界の横から黒い影が生えてきた


「何してるの?」


アイボリー色の長い艶やかな髪が、自身の頬に当たってむず痒い


クラウィール義兄さまとは方向性の違う優しい顔が、自身の顔を覗き込んでいる

聖職者のような顔つきの彼女が、不思議そうに見つめてくる


「…君は?」

起き上がると、美しい彼女の顔立ちや、華やかなワンピースが自分の目を潤す


緑の大地に立つ一輪の白い花

その存在感たるや、空に浮かぶ太陽の比ではない


「私はカミラ、あなたは?」

透き通るような声が、自分に向けて放たれる


彼女は不思議そうに自分の事を見つめてくる

それは、真水よりも澄みきった、清らかな風貌であった


「自分…は……」

美しい、見惚れて声も出せないほどに


「あれ?大丈夫?」

カミラは、少しも動かなくなった自分を心配して、目の前で手をヒラヒラと動かした


夢から覚めたように意識を現実引き戻して、自分は改めて立ち上がった


「ごめん、つい見惚れて…」

何を言っているのだ自分は


ここはせめて名を名乗る所だろう

ここにきて今まで引きこもっていた弊害が出るとは

コミュニケーション不足とは、恥ずかしいことこの上ない


「みほれて…?」

よくわからないという顔をして、カミラは眉をしかめた


「えーっと…可愛いねってこと!」

自分は何を言っているのだ

確かにそう思ったが、質問に対する答えとしては零点だ


「へぇー、君って賢いんだね」

この純粋な顔を見て、罪悪感が胸を犯す

これ以上胸を抉る訳にもいかないので、さっさと話題をすり替えた

 

「そうだ、自分の名前はクラルスだよ」

「クラルス!よろしくね」

「うん、よろしく」

すり替えた事によってこの光景が見れたなら完璧だ


彼女の笑顔は、まるで太陽のように美しい

絶対に忘れられない、最高の芸術のようだ

 

まるで六歳にして世界最高級のシェフの料理を味わったような…


いや、オーウィ義姉さまの料理を味わったか

ならば、世界最高の楽器の音を聞いたような…


いや、アルカナカンパニュラの音を聞いたか

 

…そう考えると、自分はかなり恵まれているのかもしれない

幻想局に巻き込まれた結果ではあるが、六歳でこれだけの芸術を味わうのは、まるで王族に生まれたかのように贅沢している感覚になる


感性が高くなりすぎるのは将来に影響を与えるだろうが、ならば芸術家を目指すのも良いかもしれない



そう思ってしまうほどに、彼女の笑顔は輝かしく、美しかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ