第百十五話 皆の義兄さま
─クラウィール義兄さまが起きた
幻想局との戦いから十日が過ぎた後、皆が家事をしていた昼間に、ゆっくりと体を起き上がらせた
たまたまクラウィール義兄さまの世話をしていた使用人が、すぐにその部屋に入り、起き上がったことを知ったらしい
そして今は、それを聞き付けた、主に義兄弟達が、クラウィール義兄さまの部屋に押し掛けている所だった
皆心配そうにしているが、それを見たクラウィール義兄さまの反応は、予想とは反して、
まるで別人のような、感動と、安堵を感じる反応だった
「あ…あぁ……
みん…な……?生き…てる……」
安心なんて言葉では表せないほどに、その顔には、あまりに多くの涙と、歪んだような安堵の表情が、その小さな部位に詰め込まれていた
「義兄さん!大丈夫!?」
「安心して、クラウィール
みんな生きてるから」
「はぁ………はあぁぁ……生き…てる」
真っ先に言葉が飛び出したウィルスール義兄さまと、冷静にクラウィールに答えたグローリア義兄さまの、その言葉を聞くと、クラウィール義兄さまは深く息を吐き、
再び、気絶したように眠ってしまった
「あ、またねむっちゃった」
「……とりあえず、今は家事に戻りましょうか」
すでに憂鬱な空気は吹き飛んでおり、義兄弟の間には安堵の空気が流れていた
そうして、義兄弟のほとんどは少しづつ元々やっていた家事へと戻っていく
最終的に部屋の前に残ったのは、自分と、クラウィール義兄さま、そしてラクリマ義姉さまだった
「…おや?ラクリマは家事には戻らないのか?」
「え?…あ!、うんうん、今戻ろうとしてたところ…」
少し寂しそうな表情を見せていたラクリマ義姉さまは、グローリア義兄さまの言葉に反応して、必死で否定するように答えた
それを、自分達が追求する間もなく、ラクリマ義姉さまは走って家事に戻ってしまった
「……可哀想だね…ラクリマ」
走っていく義姉さまの後ろ姿を、哀れみを含めた表情で見つめるグローリア義兄さま
その言葉にも、義姉さまを憐れんでいる気持ちが、嘘偽りなくこもっていた
「ラクリマ義姉さま、なにかあったんですか?」
自分の言葉に、義兄さまは一度表情を崩し、何かを含んだような、隠しているような笑みを浮かべ、
そこには、先ほどの憐れみは一切残っていなかった
「……さあね♪」
意味深にその言葉を残すと、グローリア義兄さまはどこかへ向かっていってしまった
何かを含めた笑顔を、隠すことはなく
屋敷を自由に歩き回るようにして
─その日の夜
再びクラウィール義兄さまは起き上がり、立ち上がった
昼間のような、複雑な感情はすでに整え、いつものような、優しく、心強い義兄として、その表情を取り戻していた
─目の前で、苦しませてしまったウィルスールとグローリア義兄さま
もはや、僕自身が見捨てたといっても過言ではない、クラルス
…どれだけ、痛み、苦しんだのだろう
僕が、助けなければならなかったというのに
…あの後どうなったのかは、知る由もない
だが、クラルスには、深い謝罪と、感謝をしなければ




