表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/158

第百十三話 敵だった客人

「離せぇ!私はしなければならないことがあるのだ!」

「落ち着いてくださいっ、まずは体の健康状態を確認しなければならないでしょうっ」


マグヌムと、押さえ付けている使用人の一人が、体を組みながら言葉を交わしていた



三人がかりでマグヌムの動きを止めているが、それでもマグヌムは少しづつ前進しているようだ




どうしようか悩んだが、連れてきたのは自分なので、責任は取らないといけないだろう

そうして、自分は暴れまわるマグヌムの前に歩いていった



「マグ…ヌム…?どうかしたんですか?」

そう声をかけ、自分の姿を目にしたマグヌム


その瞬間、体の力が抜けたようにして暴れるのをやめ、表情もだんだんと緊張が抜け、少しづつ柔らかさを取り戻していった



「クラ…ルス……か?」


「はい、そうですけど…」


そう答えると、マグヌムは冷静さを取り戻し、その場で立ち方を整える


そして、彼と話をさせてくれ、と、先ほどとは全く違う様子で、使用人達に懇願し始めた



使用人達に心配されたが、自分は大丈夫だ、もし危なくなったら大声で叫ぶから、となんとか説得し、マグヌムと二人で客室に向かった




─「まずは、感謝する」

席につくなり、マグヌムにそう伝えられた


「えっ…と?」


「決まっているだろう?精神を戻してくれたことだ」


「はぁ…」

正直自分にとっては、感謝されるよりも、性格が真逆かのように変わったマグヌムに、困惑を隠せない


だがマグヌムは、まるで気にしていないかのように話を続ける


「十二年間抵抗し続けた僕だったが、君がいなければとっくに諦めてしまっていただろう

君には、心の底から感謝をしているんだ」


「それは…良かったですけど、なにか…性格変わってませんか?」


「ん?…あぁそうか、君は知らないのだな

精神というものには、産まれた時点で元々の性格というものが備わっているのだ

幼い頃はあまり表に出てこなくとも、成長と共に少しづつ表に出てくる

その時は普通、精神の性格と成長で得た性格が混ざるものなのだが、僕は、知っての通りずっと意識の底に沈んでいたのだ

だから僕は、成長による性格がなく、精神に備わっていた性格だけが、今表に出ているということだ


君も、幻楽器を操るのならば覚えておくといい」


自信気にそう言われたが、自分は満足に理解することは出来なかった

とはいえ、幻楽器をこれから使う予定も無いので、深堀りするのはやめておき、次の質問をすることにした



「そうなんですか…

…じゃあ、なんでさっき暴れていたんですか?」


「……それはな」


マグヌムの表情が少し沈む


聞いてはいけなかったのだろうか、そう思い、先ほどの言葉を取り消そうとした時、先にマグヌムが口を開いた


「父と…母に会いたいのだ」


「っ…………」



予想外の答えに、自分は声を出すのを止めてしまった

やはり、聞いてはいけなかったと今さら後悔しても、二人の間に流れた気まずい空気は、収まることを知らない



だがマグヌムは、そんな空気を打ち破り、陽気な表情で再び話を始めた


「そういえば、ここはナルヴィー子爵の屋敷だろう?だったら、少し挨拶をしておきたいのだが…」


「あ、えっと…すみません、今子爵は病床に伏していて、ここしばらく部屋から出た様子もないんです」


「そうか…残念だな」



その後は、マグヌムの過去や、ルダスや幻楽器に関する話、現実と幻想の話や、マグヌムが自分を幻想局に誘った理由などを話した


音楽の才能を見込んで、などの、二人には詳しく分からなかった理由だったが、それを詳しく話せる者は、もうすでにいなかった



マグヌムと別れた後、マグヌムを客人として扱うことが決定した


そのため、仕事が増えたと絶望しそうになる使用人もいたが、自分も手伝うからと、なんとか使用人を説得し、その場はやっと、丸く収まった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ